鼻の穴は何故二つある?;モグラに学ぶ太古の名残

2014-5-13 21:12 管理者:  monjyu
 ヒトに限らず、ほとんどの脊椎動物の鼻の穴は二つです。一つでも良さそうですし、なぜ三つではいけないのでしょうか? 鼻の穴が二つであることに対しては、色々解釈されています。たとえば、片方ずつの鼻孔を効率よく使うため、片方は非常事態に備えるスペアのため、鼻腔の表面積を拡大させるため、発生学的に左右対称で二つになるため、などなどです。でもこれらは、今ある鼻の機能の説明、医学的観点からの解釈のような気がします。もう少し生物としての基本原則から考えてみたいと思います。
 さて、私達は体験から、片目だと立体感や距離が分かりづらく、片耳だとどの方向から音がするのか良く分からないことを知っています。目は二つ、耳も二つ、これらが正常に機能することで、視覚や聴覚は方向や、距離を確定できるのです(ステレオ認識)。生物は生きていくために、食べ物を得ること、捕食者から逃げることがとても重要です。そのため、生物は太古より対象物の方向や距離を素早く確定するシステムを確立、獲得したと思われます。従って、嗅覚も、視覚や聴覚と同様、二つの受容器官(鼻の穴が二つ)があるので、ステレオ認識が可能であり、太古より生存に大きな役割を果たしてきたと想像できます。現在のヒトは、視覚が非常に発達したため、嗅覚はあまりステレオ認識ができなくなっています。さらに陸から海に戻った(進化、適応した)イルカ類は、嗅覚を必要としなくなり、嗅覚受容体数も激減し(コラム2013-12-3)、鼻の穴も一つになってしまいました。
 今でも生存(捕食や外敵回避)のため、嗅覚でステレオ認識している動物がいます。それはモグラです。最近米国の生物学者が、モグラが匂いを立体的に把握していることを明らかにしました。餌となるミミズを見えないようにしたケ−ジの中でも、ミミズは迷うことなく5秒以内に一直線にミミズに向いますが、片方の鼻孔をふさぐと迷ってしまうそうです。ヒトと反対に、モグラは視覚が弱い代わりに、嗅覚が発達したと思われます。嗅覚がすぐれ、鼻孔がくちばしの先にあるキ−ウィ(コラム2014-2-11)も、ステレオ認識ができると推定されます。一方、フクロウは闇夜でも音源の獲物をステレオ認識して捕まえることが知られています。このように動物により得手不得手がありますが、迅速な意思決定のために、視覚、聴覚、嗅覚は二つの受容器官を用いて、方向と距離が分かるステレオ認識を太古より獲得したと推察されます。鼻の穴が二つあることはとても重要なのです。(by Mashi)  

参考文献: Ker Than, National Geographic News, February 6, 2013
コラム )
モグラは二つの鼻孔で、ヒトは二つの目でステレオ認識をする
モグラは二つの鼻孔で、ヒトは二つの目でステレオ認識をする