思いもかけず危険なカフェイン中毒にご注意を

2019-7-10 8:59 管理者:  Mashi

   長年ピロリ菌と共生していたせいか、M君はコ−ヒ−の香りは好きでしたが、飲むと胃の調子が悪くなり飲めませんでした。しかし、ピロリ菌の除去をしたところ、胃潰瘍を発症しなくなり、驚いたことにコ−ヒ−も普通に飲めるようになったのです。ピロリ菌除去により、コ−ヒ−が飲めるようになる人は結構いるようです。


   さて、淹れたてのコ−ヒ−1杯(200ml)には、およそ100〜150mgのカフェインが含まれており、エナジ−ドリンクだと1本で300mgも含まれているものもあるようです。カフェインは、アデノシン受容体に拮抗することによって覚醒作用を起こす(コラム、睡眠は謎だらけ(II):睡眠物質の最近の研究 2019-3-27)ほか、解熱鎮痛作用、強心作用、利尿作用などの薬理作用があります。以前、緑茶の機能性研究の一環で、カフェインをマウスに投与したことがありますが、興奮して落ち着かず、暴れ回って手におえなかったことがあります。


   カフェインを含むコーヒー、コーラ、栄養ドリンク、緑茶、紅茶、ココアやカフェイン錠剤などの常用、過剰摂取によりカフェイン中毒が起きることがあります。1日250mg以上のカフェイン摂取では、焦燥感、神経過敏、興奮、不眠、顔面紅潮、悪心、頻尿、頻脈などの症状が現れることがあります。アメリカ食品医薬品局(FDA)やカナダ保健省は、1日当たりカフェインを400mg以上摂取しないように勧告しています。(コ−ヒ−ではおよそ4杯、エナジ−ドリンクだと1本強に相当します)


   近年、カフェインを含有する錠剤の過量摂取による重症例や死亡例が増えているそうです。最近でも、エナジ−ドリンクを多飲していた20歳代の男性が死亡し、血中から致死量のカフェインが検出されたニュ−スが話題になりました。このような中、埼玉医科大学救急センタ−・中毒センタ−の上条吉人医師は、2011年〜2016年の5年間にカフェイン錠剤やエナジ−ドリンクの摂取後に救急搬送された患者の臨床症状などを解析しました。


   全国の38救急施設を対象にした調査で、5年間に101名のカフェイン中毒患者が搬送されました。2011年の10名から徐々に増加し、2015年には37名もの患者が搬送されたそうです。患者の中間年齢は25歳(14歳〜54歳)で、男女比はほぼ同じでした(52.5%が男性)。カフェイン錠剤を使用していた人は96.0%、エナジ−ドリンクを飲用していたのは9.9%でした。推定カフェイン摂取量は、1.2〜82.6g(中間値7.2g)でした。


   搬送された患者には頻呼吸、頻脈、意識障害などがみられ、嘔吐、不穏、不整脈、心電図の異常や一部の患者にはカリウム血症、低リン血症、高乳酸血症などが認められたそうです。搬送患者の84.2%が入院し、14.9%の患者に呼吸器の管理治療が、14.9%の患者には血液透析などが施行されました。予後として96.0%が完全回復、1.0%は遷延する頭痛の後遺症、3.0%の患者は亡くなりました。心停止を認めた7名(6.9%)はいずれも6〜36g(中間値20g)のカフェイン錠剤を摂取していました。


   今回は、わずか38施設の調査で、6.9%が心停止、3.0%が亡くなっていることから、全国の救急施設数を考えると氷山の一角であり、増加傾向を考えると事態は想像以上に深刻かも知れません。ネット解禁により、100mgのカフェイン錠剤が安価で多量に購入できます。今回の最低致死量は6.0gであり、錠剤60個で達してしまいます。スエ−デンでは、購入できる100mg含有カフェイン錠を1回30錠に制限したところ、カフェイン中毒による死亡者は減少したそうです。日本でもカフェイン錠剤の販売規制が必要かも知れません。(by Mashi)


カフェインを使わなかった小林一茶の目覚まし句

・目覚ましのぼたん芍薬でありしよな


参考文献:上条吉人、カフェイン中毒、医学のあゆみ、266, 867-868 (2018)
コラム )
カフェイン中毒は思いのほか危険
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