C型肝炎患者の腸内フロ−ラ異常:アンモニア産生菌の増加

2018-8-12 7:17 管理者:  Mashi

   腸内フローラが健康の維持や様々な疾病と関連していることは、当コラムでも何回か御紹介してきました。腸内フローラの乱れは、健康に悪影響を及ぼすことが示されており、腸内フローラを構成する細菌の種類が減少したり(多様性の低下)、普段は増加しない菌種が異常に増殖したりすることは、腸内フローラの破綻(dysbiosis)と捉えられています。


   近年、C型肝炎の治療は劇的に進歩し、今まで使用されてきた注射薬(インターフェロン)を使わず、飲み薬の組み合わせによりウイルスをほぼ排除できるようになりました。しかし 肝硬変に至った患者さんでは、ウイルスを駆除しても肝臓を完全に修復することは難しく、高アンモニア血症の予防、治療が大きな課題です。


   最近、名古屋市立大学、九州大学、奈良県立医科大学、愛知医科大学の共同研究者は、病期の異なるC型肝炎患者の腸内フローラを解析し、その特徴と体への影響について解明を試みました。その成果、C型肝炎ウイルス(HCV)の持続感染が腸内フローラを変化させ、病状が悪化するにつれて腸内フローラの破綻(dysbiosis)が起こることを世界で初めて証明しました。


   研究グループは、健常人23 名、病期の異なるC型肝炎患者166名(肝機能が正常なC型肝炎ウイルスキャリア18名、慢性肝炎 84名、肝硬変 40 名、肝がん 24 名)から便検体を得、次世代シーケンサーを用いて腸内フローラの特徴を解析しました。これまでC型肝炎初期の腸内フローラに関する報告はなく、また腸内フローラの変化を病期別に解析した研究もありませんでした。


   その結果、次のようなことが明らかになりました。1)肝機能正常のC型肝炎ウイルスキャリアでも、すでに腸内フローラに変化が現われていた。2)キャリア、慢性肝炎、肝硬変、肝がんと病状の悪化に伴って、腸内フローラでの常在菌の占有率が低下し、フローラを構成する細菌の種類が減り、便の水素イオン指数(pH)が高くなっていた。3)C型肝炎の進行に伴って、腸内フローラにレンサ球菌属のストレプトコッカス・サリバリウスなどが異常に増えていた。4)腸管内で増加しているレンサ球菌属の細菌は、ウレアーゼ(尿素を分解してアンモニアを作る)遺伝子を持っていた。


   すなわち、C型肝炎の病期の進行に従い腸内フローラが破綻し、腸管内で異常に増殖したレンサ球菌属の細菌が、尿素を分解してアンモニアの増加を引き起こしている可能性があります。腸管から吸収されたアンモニアが血液中に増加すると、高アンモニア血症・肝性脳症(図参照)の原因となることから、ストレプトコッカス・サリバリウスなどのアンモニア生産菌は病期の進行に関与している可能性が示唆されました。


   しかしながら、C型肝炎ウイルスの感染でなぜ腸内フロ−ラの変化が起きるのか、腸内フロ−ラの異常を治せば病状は改善するのか、など未解明の謎が多くあります。いずれにせよ、こうしたアンモニア生産菌を増殖させないことが、肝硬変などで見られる高アンモニア血症の予防や治療につながる可能性があると思われます。(by Mashi)


参考文献:Takako Inoue et al.,  Gut Dysbiosis Associated With Hepatitis C Virus Infection. Clinical Infectious Diseases(2018)  https://doi.org/10.1093/cid/ciy205[/size]
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C型肝炎患者の腸内フロ−ラ異常:アンモニア産生菌の増加
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