最近話題のパンプスとダンプスとは?:ついでにパルルスも

2018-7-4 7:24 管理者:  Mashi

   最近医療分野で話題になっているパンプスとは、靴のことではありません。ダンプスもダンプカ−ではありませんし、パルルスも生協とは関係ありません。これらは近年の自然免疫研究の進歩の中から生まれた言葉です。では結論を先に。パンプスとは、Pathogen-associated Molecular Patternsの略 PAMPsで、日本語では「病原体由来関連分子群」とも言われています。ダンプスは、Damage-associated Molecular Patternsの略 DAMPsで、日本語では「細胞・組織障害関連分子群」です(図参照)。パルルスは、Pattern Recognition Receptorsの略PRRsで、「パタ−ン認識受容体群」です。


   免疫反応は、獲得免疫と自然免疫の2つに大きく分類できます。抗体やリンパ球が関与し、特異性と記憶に優れ、進化した脊椎動物が持っている獲得免疫に対し、自然免疫は基本的に全ての動物が保有しています。ヒトも自然免疫システムを保有しており、主役はマクロファ−ジなどの食細胞です。獲得免疫では、たとえば細菌の抗原を抗体やT細胞受容体が認識しますが、自然免疫では「抗原ではない細菌の異物性」を食細胞上の「非特異的な受容体」が幅広く認識、反応、貪食などを行います。この「抗原ではない細菌の異物性」をパンプス(PAMPs:病原体由来関連分子群)と呼び、食細胞上の「非特異的な受容体」をパルルス(PRRs:パタ−ン認識受容体群)と呼称しています。


   さて自然免疫において、細菌など外因性の異物排除にかかわるパンプス(PAMPs)に対し、生体内にもともと存在していた内因性のものがダンプス(DAMPs)です。以前のコラム(2015-7-6)でもご紹介しましたが、災害現場などでよく起こる大怪我(クラッシュ・シンドローム(挫滅症候群(ざめつしょうこうぐん)、圧挫症候群(あつざしょうこうぐん))では、筋肉などの組織が損傷、破壊し、壊死した組織(細胞)から様々な内因性物質(ダンプス(DAMPs))が血中に放出され、食細胞などのパタ−ン認識受容体群(パルルス(PRRs))を刺激、その結果全身の代謝や臓器が影響を受け、ショック症状を引き起こします。


   以前は、敗血症ショック死の原因は、TNFやIL-1などの炎症性サイトカインが主役と考えられてきましたが、最近の研究から分子量約3万の非ヒストン核タンパク質(HMGB1)がダンプス(DAMPs)として主に作用していることが分かってきました。ダンプス(DAMPs)は内因性のものですから、様々な体内成分(例えばヒストン、尿酸、ATP、S100タンパク質など)の多くがその候補となります。


   これらのダンプス(DAMPs)やパンプス(PAMPs)が結合する相手が、食細胞などの細胞膜上にあるパタ−ン認識受容体群(パルルス(PRRs))です。パルルス(PRRs)は、スカベンジャ−受容体、Toll様受容体、レクチンなど様々なものが最近では知られています。さらにこれらのパルルスは、食細胞だけではなくリンパ球やその他の細胞にも広く分布していることが最近分かってきました。細菌などの外敵(パンプス(PAMPs))から身を守る自然免疫の大切なシステムであるパルルス(PRRs)ですが、実は身内の物質(ダンプス(DAMPs))にも反応し、除去する大切なシステムでもあったわけです。命の仕組みに脱帽です。(by Mashi)


参考文献:特集、DAMPsと疾患・創薬、医学のあゆみ、264, 1009-1053 (2018)
コラム )
最近話題のパンプスとダンプスとは?
最近話題のパンプスとダンプスとは?