飢餓、摂食障害では急に栄養をつけては危険:リフィ−デイング症候群とは?

2018-6-27 7:26 管理者:  Mashi

   時は戦国時代。秀吉の兵糧攻めは有名ですが、降伏後には飢餓でやつれた敵の兵士に大釜でお粥を振る舞ったそうです。ところが驚いたことに、飢餓を生き抜いた兵士は、お粥を食べてほとんど死んでしまったと伝えられています。毒を盛られたわけではありません。一体何が起きたのでしょうか?


   以前のコラム(非常時の栄養補給の常識は非常識!?:2017-2-18)で、外科手術、大怪我、癌の化学療法など高度侵襲急性期の大きなストレス時には、栄養補給を抑制した方が予後はむしろ良いという事をご紹介しました。今回の話題は、それにつながるかもしれないリフィ−デイング症候群のお話です。


   リフィ−デイング症候群は、第二次世界大戦後に解放された捕虜が、食料を十分に与えられたときに、心不全症や神経症状を呈して死亡したことから知られるようになりました。秀吉の兵糧攻め後のお粥で起きたことと全く同じです。リフィーディング(refeeding)症候群とは、re(再び)feeding(摂取)という言葉からなり、急激な栄養補給による障害を広く指して使われます。


   リフィーディング症候群とは、飢餓状態など慢性的な栄養障害がある状態に対して、急激に栄養補給を行うと発症する代謝性の合併症です。心不全や呼吸不全、腎不全、肝機能障害、不整脈、意識障害、けいれん、四肢麻痺など多彩な症状が知られています。絶食、摂食障害、低血糖などの場合には、適切なカロリーの投与を急ぎたくなりますが、飢餓状態では代謝に変化をきたしており、急速な栄養補給は大変危険です。


   飢餓状態になると、エネルギー代謝の主体は、糖から、貯蔵された脂肪や蛋白質を利用するように変わり、主要なミネラルも枯渇します。このようなときに急に糖質を補給されると、急激な糖負荷によりインスリン分泌が増加し、リン、マグネシウムなどのミネラルはグルコース利用(細胞内への移動)に伴って細胞内に移動し、血中濃度は低下します。また、ビタミンB1の利用も増加しますが、低栄養により欠乏状態です。血中のリン不足により、末梢組織への酸素供給量が減少、さらに末梢組織もリン不足からエネルギ−源のATP産生が減少し、臓器障害が起き始めます。


   このように、リフィーディング症候群は、ミネラル(特にリン)やビタミン(特にB1)の慢性欠乏時、これらの補充なしに急に糖質を与えると発生する多様な代謝障害といえます。従って、摂食障害、絶食、飢餓状態からの回復時には、エネルギー量は少量から開始し、電解質、リン、亜鉛などの微量元素やビタミンB1の補充などが重要となります。


   秀吉が遺した兵糧攻めの教訓?は、摂食障害などの現代版飢餓に生かされているといえましょう。(by Mashi)


参考文献:鈴木(堀田) 眞理、摂食障害の救急治療と再栄養時のrefeeding症候群、日本内科学会雑誌、105:676〜682,(2016)
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