ピロリ菌を認識するマクロファ−ジ表面の構造が明らかに

2018-6-20 7:40 管理者:  Mashi

   ピロリ菌(Helicobacter pylori)は、よく知られているように胃の粘膜に生息するべん毛を持ったらせん形の細菌です。子供の頃に感染し、一度感染すると多くの場合、除菌しない限り胃の中に存在しつづけます。ピロリ菌の感染により炎症が起きますが、多くの場合ほとんど症状はありません。胃には強い酸(胃酸)があるため、昔から細菌はいないと考えられてきましたが、近年ではさまざまな研究から、ピロリ菌が胃炎や胃潰瘍などの疾病と深く関っていることが明らかにされています。ピロリ菌はウレアーゼという尿素を分解してアンモニアを作る酵素を持ち、ピロリ菌のまわりの胃酸を中和して生存しています。ピロリ菌の除菌治療には、2種類の抗生物質が用いられ、一週間の服用で約8割の人で除菌が成功します。


   さてここでたった1名ですが、個人の感想、体験談です。M君は若い頃より胃潰瘍を起こしやすく、オリンピック開催のように4年に一度くらい出血していました。数年前の土曜日の夜、新宿で飲み会をしていたM君は、ひどく出血し、意識が遠のき歩けず、死ぬ時はこんな感じなのかなと思いました。顔面蒼白、血圧80以下、脈拍150 という状況を乗り越え、月曜日に病院に行ったところ、医師に救急病院に即行くべきだったとあきれられました。そして後日、M君がピロリ菌の検査をしたところ、予想通り陽性だったため、除去薬を飲み、ピロリ菌の除去が確認されました。すると驚くような変化がM君の体に現れたのです。その1:胃潰瘍を全く起こさなくなった。その2:常備薬だった胃薬が全く必要なくなった。その3:飲めなかったコ−ヒ−が問題なく飲めるようになった。以上、M君一人の体験談ですが、ピロリ菌の存在も,検出も、除菌もできなかった時代とは隔世の感があります。


   さてマクロファ−ジの細胞表面には、細菌を認識する受容体としてスカベンジャー受容体、Toll様受容体(TLR)、レクチン(糖鎖を認識する受容体)などが知られていますが、ピロリ菌の認識に関しては不明でした。最近岡山大学大学院の研究陣は、ピロリ菌感染における免疫反応では、マクロファージ上のレセプターであるC型レクチンの一種DEC205 が重要な働きをしていることを突き止めました(図参照)。


   胃の粘膜には粘膜付属のリンパ器官はありませんが、胃粘膜上皮間に浸潤したマクロファージが、ピロリ菌を認識していることが分かりました。そしてマクロファージがピロリ菌を認識、貪食するときには、マクロファ−ジ上のレセプターであるC型レクチンの一種DEC205 が菌の細胞表面構造を認識していることが判明しました。さらに、ピロリ菌感染胃粘膜では、ピロリ菌認識分子DEC205 を発現したマクロファージが、上皮細胞間に多数浸潤していることも分かりました。さらにピロリ菌感染者は、ピロリ菌に反応するマクロファージが全身に分布していることも示されました。胃に感染するピロリ菌は、胃腸の疾患だけではなく全身の免疫系に影響し、さまざまな疾患に影響していると考えられています。日々ピロリ菌と戦うマクロファ−ジ頑張れ!そして消化器潰瘍に悩まされている人、早く除菌を!(by Mashi)


参考文献:Masahide Kita et al., DEC205 mediates local and systemic immune responses to Helicobacter pylori infection in humans. Oncotarget. 2018 Mar 23; 9(22): 15828–15835.  
コラム )
ピロリ菌を認識するマクロファ−ジの受容体(C型レクチンDEC205)
ピロリ菌を認識するマクロファ−ジの受容体(C型レクチンDEC205)