高感度CRP(炎症・感染症の臨床マ−カ−)の新事実;忍び寄る心血管病

2018-6-13 7:23 管理者:  Mashi

   CRP(C-reactive protein :C反応性蛋白)は、臨床における代表的な血中マ−カ−ですのでご存じの方も多いと思います。CRPは、肺炎球菌のC多糖体と結合する血漿蛋白として発見されましたが、現在では肺炎球菌表面のリン脂質(ホスホリルコリン)に結合する事も分かっています。CRPは健常人の血液中には微量にしか含まれていませんが、感染症や炎症、細胞の破壊などでCRPは肝臓ですみやかに産生され、血液中に現れます。CRPは、感染症や炎症の程度に比例して数値が上昇するため、疾病の指標として臨床で広く用いられています。


   CRPの正常基準値は、通常0.3mg/dl以下です(濃度は通常ml当たりで表示しますが、臨床ではdl (=100ml)も良く使います。要注意)。CRPは炎症などが起きてから数時間で増え始め、2日程度でピ−クになります。軽い炎症などの時の値は0.4〜0.9mg/dl、中程度の炎症では 1.0〜2.0mg/dl、中程度以上の炎症では2.0〜15.0mg/dl、重篤な疾患では15.0〜20.0mg/dlにもなります。CRP値が高い場合は、細菌感染症、膠原病、リウマチ熱、心筋梗塞、肝硬変、敗血症、悪性腫瘍などの疾病の可能性があります。


   健診受診者のCRP濃度中央値は0.08 mg/dlであり、CRPが1.0 mg/dlを超える健常人は約1%で、大部分(90〜95%)の人は0.5 mg/dl未満です。従って正常なCRP値として多くの場合0.3 mg/dl以下が用いられています。ところで、最近は検査技術の向上により0.1 mg/dl以下のCRP値も測れるようになり、高感度CRP (hsCRP)と呼ばれています。この高感度CRPの解析から、正常範囲とされている0.3 mg/dl以下のヒトにも、体に微少な炎症が存在することが推察されるようになりました。


   この高感度CRP の測定から、最近では冠動脈疾患のリスクが濃度依存的に上昇することも分かってきました。CRP値0.07mg/dlではリスクは非常に低いのですが、0.12〜0.19mg/dlで要観察 、0.20〜0.38mg/dlはリスクが高く、0.39〜1.50mg/mlでは非常に高いと考えられています。つまり従来の正常範囲である0.3mg/dl以下でも安心できないことになります。実際、米国の健康な中高年では、男女共に血中CRP値が高い人ほど、心筋梗塞の危険率が高くなることが報告されています。さらに、従来から危険因子とされてきた「血中の総コレステロール値やLDLコレステロール値などが高い」人は、血中CRP値が高いとさらに危険率が高くなる結果も示されています。


   日本においても福岡県久山町で3,000人を超える疫学調査(久山町研究)が行われており、高感度CRPレベルと5年間の観察期間中の心血管病発症が調べられています。CRP値が0.1mg/dl以下の人に比べ、0.1mg/dl以上の人は虚血性心疾患や脳卒中が約2倍近く多く発症したことが報告されています。興味深いのは、高感度CRPで0.1mg/dl以上だった人の中でも、血清EPA(エイコサペンタエン酸)の相対濃度が高かった人は、心血管病発症リスクが最大で75%も低下していたことです。さらに魚の摂取量と血清中のEPA濃度は相関していたそうですが、実際EPA(魚の摂取)は、抗炎症作用を発揮することはよく知られています。 


   心血管病に至る初期では、動脈硬化が起き、血管内は慢性的な炎症を起こしていると考えられ、その結果血中のCRP が微量ながら増加すると想定されます。高感度CRP を測定することで、従来は正常とされていたヒトで、心筋梗塞などの心血管病の予防や早期診断ができることが期待されます。(by Mashi)


参考文献:二宮利治、脂肪酸クオリティと疾患リスク、医学のあゆみ、264, 939-943 (2018)
コラム )
高感度CRPで分かる心血管病リスク
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