気管支喘息発症に新犯人:謎多き自然リンパ球の関与

2018-4-25 7:29 管理者:  Mashi

   哺乳動物で高度に進化した獲得免疫系では、Tリンパ球(T細胞)がヘルパ−やキラ−機能などを示し、Bリンパ球(B細胞)が抗体を作ります。一方多くの動物が保有している自然免疫系では、マクロファ−ジなどの食細胞が、貪食機能や炎症反応などを主に担っています。ところが近年、自然免疫系で働くリンパ球が次々と発見され、これらのリンパ球は「自然リンパ球」と総称されるようになりました。


   「自然リンパ球」はリンパ球系に属する自然免疫細胞です(1,2,3型の3種類が知られています)が、B細胞受容体やT細胞受容体を持たず、抗原特異的な応答はしません。しかしながら、この細胞群は様々な生理機能を持ち、免疫系の恒常性維持や炎症反応に重要な役割を担っており、異常な場合にはアレルギーや自己免疫疾患などの疾病の原因にもなると想定されています。まだ発見されて日も浅く、謎多きリンパ球です。


   最近、東北大学大学院医学系研究科と理化学研究所の共同研究グル−プは、気管支喘息の原因となる自然リンパ球の活性化を引き起こす新しいメカニズムを明らかにしました(図参照)。それは、1)自然リンパ球の細胞表面に発現しているGITR と呼ばれるタンパク質が、自然リンパ球の活性化に必須であること、2)GITRタンパク質が関与する自然リンパ球の活性化が気管支喘息の原因となる、という新発見です。


  自然リンパ球の細胞表面に発現しているGITR (glucocorticoid-induced TNF receptor family-regulated gene) は、膜貫通型タンパク質で、TNF(腫瘍壊死因子)受容体スーパーファミリーに属します。GITRは免疫学的自己寛容の維持に関与していると考えられており、自己免疫疾患モデルマウスにおいて、GITRの活性化は自己寛容を崩壊させ、自己免疫疾患を引き起こすことが示唆されています


   研究者達は、T細胞の活性化を制御することが知られていた GITRタンパク質が、T細胞とは別のグループに属する自然免疫系の自然リンパ球(2型)に存在すること、さらにその GITRタンパク質が、2型自然リンパ球の活性化に必須であることを発見しました。2型自然リンパ球は、気管支喘息などのアレルギーが起きるときに最初に活性化する免疫細胞であり、2型自然リンパ球が活性化しないとアレルギーが起こらないことが知られています。


   そこで、 GITRタンパク質を欠損したマウスで気管支喘息(アレルギー性喘息)を薬剤によって誘発しようとしましたが、GITRタンパク質が欠損した2型自然リンパ球を活性化できないため喘息は生じませんでした。さらにGITRを阻害する物質を開発し、マウスに投与したところ、薬剤による気管支喘息が誘発されませんでした 。


   まだまだよく分からない点が多い、謎多き自然リンパ球ですが、今回の発見によって、気管支喘息が起こる新しい仕組み明らかになりまた。今後は、2型自然リンパ球に存在する GITRタンパク質を阻害する物質を探索し、新しいアレルギー治療薬の開発も期待されます。(by Mashi)


参考文献:Hiroyuki Nagashima et al., GITR co-signal in ILC2 controls allergic lung. J Allergy Clin Immunol., (2018.Feb.8). pii:S0091-6749(18)30213-6. doi: 10.1016/j.jaci.2018.01.028.
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