俗語「アル中ハイマ−」は本当だった!:アルコ−ルの多飲は認知症の危険因子

2018-4-11 7:35 管理者:  Mashi

   お酒に酔って足下がふらつき、持ち物をなくし、記憶が飛んでしまう状態を、自分はアルツハイマー病ではなく、「アル中ハイマ−」などとハイカラぶる?御仁が身近にもいる。でもそれはどうやら本当に認知症の予備軍のようです。フランス人3,000万人の大規模調査を行ったカナダ精神衛生・依存センタ−の研究者達から、アルコ−ルの飲み過ぎは、認知症の重要な危険因子であることが明らかになりました。


   認知症の原因として様々なことが言われていますが、良く分からないというのが現状であり、疾病を根本から治す確立された治療法もありません。認知症にならないようにするためには、食事、運動、コミュニケ−ション、知的活動などの重要性が指摘されていますが、本当にどの程度予防効果があるのか明確ではありません。


   大規模な疫学調査は、疾病と病因の因果関係のヒントになることがあります。今回は、2008〜2013年の間に、フランスの3,162万4156人の医療記録を解析した大規模疫学調査から見えてきた貴重なデ−タです。この5年間の調査期間中に、110万9,343人が認知症と診断されたそうです。研究グル−プの解析の結果、アルコールの飲み過ぎがあらゆる種類の認知症、特に早期認知症のもっとも重要な危険因子であることが明らかになりました。


   世界保健機関(WHO)は、慢性的な大量飲酒をアルコール換算で、男性の場合は1日当たり60グラム以上、女性の場合は40グラム以上と定義しています。アルコール60グラムは、ビールではおよそ1200ml (大瓶2本弱)、日本酒で約3合、ウイスキーでは約180mL(シングル6杯)、ワインでは約600mL(グラス4杯)に相当します。意外と少ない?量です。日本では、大量飲酒者(アルコール換算で60g以上)は成人男性で4.1%、女性で0.3%という報告や、大量飲酒者は980万人という推計もあります。


   大量飲酒者は、肝臓系疾患、消化器系疾患、循環器系疾患、脳・神経系疾患など、様々な疾病に罹患する確率が高くなることが知られています。さらに大量飲酒者やアルコール依存症患者には脳の萎縮がみられ、飲酒量が多いほど萎縮の程度は重篤になることも知られています。アルコールを長期間多量に摂取していると、ビタミンB1の欠乏から脳でのエネルギー代謝が壊れ、脳障害を起こし易くなります。日本では、施設に入所している認知症の高齢者の約3割は大量飲酒が原因という調査や、大量飲酒の経験がある高齢男性は、認知症になるリスクが、4.6倍高まるという研究もあります。

   さて、今回のフランス人3000万人の大規模医療調査から、アルコールの大量飲酒は、あらゆる種類の認知症のリスクを、男性で3.4倍に、女性で3.3倍にそれぞれ上昇させることが分かりました。また、認知症患者全体の5.2%にあたる5万7,353人が65歳以前に発症する早期認知症と診断されました。認知症全体では女性の発症が少し多いですが、早期認知症に限ると3分の2(64.9%)は男性でした。驚くべきことに、早期認知症と診断された患者の半分以上が、アルコールの飲み過ぎと関連していることも判明したそうです。


   研究者達は、「アルコールの飲み過ぎが認知症のもっとも重要な危険因子であることが明らかになった。特に早期認知症は死亡リスクが高く、飲酒と関連が深い。」と述べています。さらに、「アルコールがもたらす脳のダメージと認知症は予防が可能です。アルコールをコントロールすることで認知症の発症をある程度くい止められる可能性がある。」とも指摘しています。また、喫煙習慣、高血圧、糖尿病、うつ病、難聴などがあると、アルコールによる健康障害が増えることも示されました。これらはすべて認知症の危険因子でもあり、アルコールによる健康障害は多面的に、認知症の発症リスクを上昇させると考えられます。「アル中ハイマ−」などと自嘲せずに、お酒は適量に楽しくがやはり基本ですね。(by Mashi)


参考文献:Michaël Schwarzinger, et al., Contribution of alcohol use disorders to the burden of dementia in France 2008-13: a nationwide retrospective cohort study. Lancet Public Health, Published: Volume 3, No. 3, e124–e132, March 2018
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アルコ−ルの多飲は認知症の危険因子
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