尿で新しく見つかった食物アレルギ−のマ−カ−

2018-2-28 7:49 管理者:  Mashi

   食物アレルギーは、タマゴ、エビ、カニ、ピ−ナッツ、牛乳、小麦、そばなどの食物に含まれている抗原物質に反応して起こるアレルギー反応です(図参照)。食物アレルギーは比較的子供に多く、おう吐や下痢だけではなく、かゆみやじんま疹などの症状を引き起こしたり、最悪の場合にはアナフィラキシーショックを起こして死に至るケースもあります。これを回避するには、抗原となる食物を特定して、食べることを避けるのが最善の策です。


   現在日本ではおよそ120万人の患者がいると考えられていますが、食事の欧米化と共に患者数は増加しています。食物アレルギーの診断には、医師が患者に抗原となる食べ物を実際に食べさせて症状が出るのを確認する経口抗原負荷試験が行われています。しかしこの診断方法は、アナフィラキシーを起こすリスクもあります。そのため、知識や経験が豊富な医師が注意深く行う必要があり、また患者とその家族にかかる負担も大きいため、簡便で客観的な診断方法の開発が求められています。


   食物アレルギーの検査として、血中の抗体(IgE)濃度の測定が行われていますが、血中の抗体濃度は症状の発現と相関しないケースも少なくありません。すなわち、高い抗体値にもかかわらず症状がでないケースや、逆に抗体値が低いのに重篤な症状がでるケ−スもあります。幼児から採血するのも難点です。


   最近、東京大学大学院を中心とする研究グル−プは、アレルギーの原因となるマスト細胞から大量に産生されたプロスタグランジンD2の代謝産物(prostaglandin D metabolite: PGDM)が、尿に排泄されていることを、食物アレルギーを発症させたマウスで新たに見つけました。この代謝物は、食物アレルギーに特異的であり、またその量は症状の程度に比例していることも分かりました。


   過去のコラムでもご紹介しましたが(体内のマッチポンプ:マスト細胞はアナフィラキシーを起こし鎮める:2017-8-6)、マスト細胞は積極的に炎症・アレルギ−を起こし、その後その行き過ぎを抑えるために、自らが生理活性物質(脂質メディエ−タ−)のプロスタグランジンD2を産生していることが最近分かってきました。この炎症を抑えたプロスタグランジンD2が代謝され、尿中に出てくると思われます。


   正常なマウスに、卵白に含まれるアルブミンを腹腔内に投与した後、アルブミンを連続して食べさせると、食物アレルギーが発症します。このとき消化管にはマスト細胞が浸潤し、その数は食物アレルギーの悪化と相関します。このマウスの尿を採取して、脂質を質量分析装置により解析したところ、卵白アルブミンの投与回数に比例して、プロスタグランジンD2の代謝産物(PGDM)の濃度が高くなっていることが分かりました。また、食物アレルギーと同様の症状が出て見分けがつけにくい、炎症性の腸炎や喘息、アトピー性皮膚炎を発症したマウスの尿では、この物質の濃度は変化しませんでした。


   さらに、東京大学医学部附属病院にて、食物アレルギー、喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎の患者を対象に、尿のPGDM濃度を測定したところ、食物アレルギー患者でPGDM濃度が高くなっていることが判明しました。この新しく見つかった食物アレルギーに特異的で、かつ症状の程度を評価できる尿中の診断マーカーが、実用化されることを期待しています。(by Mashi)


参考文献:Shingo Maeda et al., Prostaglandin D2 metabolite in urine is an index of food allergy. Scientific Reports(2017)  DOI:10.1038/s41598-017-17798-
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食物アレルギ−の新マ−カ−
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