思いもかけなかったインフルエンザ関連疾患:心筋梗塞の危険性

2018-2-14 7:24 管理者:  Mashi

   インフルエンザが大流行した年には、インフルエンザによる直接的な死亡者だけではなく、呼吸器疾患、腎障害、進行がん、糖尿病、免疫不全などの基礎疾患をもつ患者さんの死亡数も増加し、結果的に全体の死亡者数が増加することが知られています(これを統計上超過死亡と言います)。インフルエンザによる直接の原因だけでなく、間接的な影響も含めれば、日本でも約1万人程度が毎年死亡していると推測されています。


   インフルエンザウイルスは、肺炎や脳炎を起こすことがあります。このインフルエンザ肺炎とインフルエンザ脳症は、重症化して死亡の原因となることがあり、特にインフルエンザ脳炎は小さな子どもに発症しやすい合併症です。また、高齢者に起こりやすい合併症に、二次性の細菌性肺炎があり、これはインフルエンザウイルスが直接原因となる肺炎とは異なります。インフルエンザに感染すると、ウイルスによって気道の粘膜などが損傷を受け、その局所の免疫機能の低下とともに、細菌が侵入しやすくなり肺炎を起こしたりします。したがって、このような細菌による肺炎は、インフルエンザの感染後、回復し始めてから発症することが多くなります。


   最近、従来から知られていたインフルエンザ関連疾患に加え、心筋梗塞もインフルエンザと関連するという研究が、カナダのトロント大学の研究者たちから報告されました。この研究は、2009年から2014年にかけてインフルエンザウイルス感染の確認された患者さん、及び2008年から2015年にかけて急性心筋梗塞で入院した患者さんを調べ、インフルエンザ感染中に起こった心筋梗塞の発生頻度を、それ以外の時期での心筋梗塞発生頻度と比べたものです。


   インフルエンザの感染者は、ウイルス遺伝子の検出で確認できた35歳以上の19,045名です。この中で調査期間中に急性心筋梗塞を起こして入院した人は487名ですが、インフルエンザウイルスが検出された後1週間以内に発病した患者さんが20名いることが分かりました。この数字からインフルエンザと関連する心筋梗塞を計算すると、ウイルス感染後の1週間は、心筋梗塞の発症が通常時の6倍にまで頻度が上がることが分かりました。一方、感染が確認された後、回復期にあたる8日目以降1ヶ月までを見ると、頻度は通常時の頻度とほぼ同じ(0.6〜0.75)に低下することから、インフルエンザ感染時は間違いなく心筋梗塞の危険性を高めていると思われます。


   このインフルエンザに関連した心筋梗塞発症は、65歳以上では7.5倍と高く、65歳以下では2.8倍ですが、性別では女性に多いことが判明しました。また原因はわかりませんが、インフルエンザによる心筋梗塞は、A型インフルエンザよりB型の方が2倍頻度は高いそうです。このインフルエンザ関連の心筋梗塞発症は、ウイルス感染により動脈硬化などの基礎疾患が悪化する可能性やウイルス感染による激しい炎症で、血管の収縮や損傷、ストレス反応が起こるためかもしれません。今後の研究、解析が待たれます。いずれにせよ、インフルエンザを侮ってはいけませんね。(by Mashi)


参考文献:Jeffrey C. Kwong et al., Acute myocardial infarction after laboratory-confirmed influenza infection. The New England Journal of Medicine   378:345-353 (2018) DOI: 10.1056/NEJMoa1702090
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インフルエンザに潜む心筋梗塞の危険性
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