植物の根切りと再生のメカニズム:盆栽にも科学のメス

2018-2-7 10:11 管理者:  Mashi

   植物が大きくなるというのは、実は根がはるというのと同じ意味を持っています。根は大きく二つの役割を持っています。一つは、水と栄養分(無機質)を吸い上げ地上部まで届ける役割であり、主に細い根(細根)が担っています。細根の多くは数ヶ月で枯死し、枯死と同時に多くの細根が生まれています。二つ目の役割は、植物を支えることであり、下に伸びる直根と横に伸びる側根に分けることができます。


   一般的に、樹木の側根の根張りの距離は、木の水平方向への枝張りの距離と同じぐらいか、それ以上と言われています。想像以上に水平方向への根張りはありますが、地上部を支えられるだけの力が地下部に無いと、植物は倒れてしまうので当然ともいえます。このように植物を支える大切な根は、昔から数多くの諺、慣用句を生んでいます。根に持つ、根も葉もない、根を張る、根を絶つ、舌は禍の根、運根鈍・・・・・


   さてこの大切な根ですが、植物の根は切っても新しい根ができることは、経験的に広く知られています。園芸では、植物の移植や地上部の生育促進の技術として、根の一部を切断する根切りがよく知られています。根切りは新しい根を人為的に発生させ、水や養分の吸収を促進させると考えられています。実際、私もバラの根切りを時々します。こんなによく知られ、普遍的に行われている根切りですが、実は土の中で観察しにくいこともあり、根の傷害応答については注目されておらず、根が再生するメカニズムについての研究はありませんでした。


   最近、北海道大学大学院と帝京大学理工学部の研究者は、植物のたくましさに関わる根の再生メカニズムを解明しました。モデル植物として全ての遺伝情報が明らかになっているアブラナ科のシロイヌナズナを、厳密にコントロールされた育成室で育て、根の再生を調べました。その結果、根を切ると一日約1cm弱、通常の約3倍の速度で根が伸長することが分かりました。さらに植物の成長と形作りに必要な植物ホルモンであるオーキシンの量が増えることを発見し、11種類あるオーキシン合成遺伝子のうちの一つYUCCA9が特に重要な働きをしていることを、遺伝子発現、阻害剤、突然変異体の解析から明らかにしました。またオーキシンを移動させる極性輸送も、根切りでは重要な役割を果たしていることが判明しました。


   根切りによる傷害応答と根の再生のメカニズムは、シロイヌナズナのみならず多くの植物に共通しています。盆栽でも根切りを行い、根切りされた植物(盆栽)は、水や養分を効率よく吸収できる若い根を限られた空間(鉢)で再生します。盆栽作りでもオ−キシンを中心とする分子メカニズムが働いていることになります。根の剪定技術は農業生産の向上にも関わることであり、今後の農業技術の進展にも寄与する可能性が考えられます。(by Mashi)


参考文献:Dongyang Xu, et al., YUCCA9-mediated Auxin Biosynthesis and Polar Auxin Transport Synergistically Regulate Regeneration of Root Systems Following Root Cutting. Plant and Cell Physiology, Volume 58, Issue 10, (2017), Pages 1710–1723, https://doi.org/10.1093/pcp/pcx107[/size]
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根の再生メカニズム
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