氷は−130℃以下の低温でまた液状になる!:惑星誕生の解明へ第一歩

2018-1-3 7:41 管理者:  Mashi

   天体観測には、大気が澄む冬が適しています。寒さに震えながら、小さな望遠鏡で星や月を飽きずに眺めていた少年がいました。星の誕生に思いをはせながら。望遠鏡や顕微鏡は今でも好きです。肉眼では見えない世界が拡がるから。


   さて恒星やその周りの惑星は、星々の間を漂うガスの濃い領域(分子雲)から誕生します。分子雲の中では、およそ−260℃の低温下で何種類もの元素(水素、炭素、窒素、酸素)が多様な分子をつくり、氷(星間氷)も存在しています。最近では、分子雲に多数の分子が新たに発見され、また分子雲やその後の星形成に伴ってつくられる原始惑星系円盤の化学構造の多様性なども分かってきました。


   星間氷の表面では多様な分子が生成され、さらに紫外線よって氷内の分子の結合が切れ、それらを材料に複雑な有機物が産生されることが知られています。そしてこれらの複雑な有機物が、彗星や地球外の物質中に発見される高分子有機物の起源だと考えられています。星間氷は、宇宙における有機分子形成のふるさとであると言えますが、これまで有機物形成の場となる星間氷そのものの性質については、よくわかっていませんでした。


   最近、北海道大学大学院理学研究院、北海道大学低温科学研究所、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の研究グル−プは、分子雲に存在する氷(星間氷)を模した紫外線照射非晶質氷(水・メタノール・アンモニアの混合氷)が、−210から−120℃の低温で、これまで考えられてきた固体状態ではなく、液体的にふるまうことを発見しました。さらに純粋な水からなる氷も紫外線照射により−220から−130℃で液体状になることを発見し、低温下で紫外線照射により現れる液体的な性質は、氷に特徴的な現象であることがわかりました。液体は化学反応を促進するため、星間氷の液体的なふるまいは、生命材料となる有機物の形成を容易にしている可能性が考えられます。


   この研究は、低温下で紫外線を照射した氷に液体的な性質が現れることを示したものですが、実際宇宙空間においても紫外線の照射総量が液体状氷の発現条件であった場合、分子雲では、10 万年から100 万年の紫外線照射で液体状の氷が現れる計算になるそうです。これは宇宙における分子雲の寿命を考えると、十分に起こり得ることだといえます。惑星形成の第一歩は、星間氷などの塵の付着成長ですが、液体状の氷は塵が衝突して大きくなる効率を上げると思われます。このように、低温での紫外線照射氷の液体的なふるまいは、有機分子の合成と、惑星形成の第一歩である塵の集積過程に有効に働いていると考えられます。


   超伝導現象もそうですが、想像を絶する宇宙空間の低温では、氷が水になるような想像を超えることが起きているのですね。私達の経験している現実が通用しない超低温の世界、幻想的かつ魅力的です。(by Mashi)


参考文献:Shogo Tachibana et al., Liquid-like behavior of UV-irradiated interstellar ice analog at low temperatures. Science Advances (2017):Vol. 3, no. 9, eaao2538, DOI: 10.1126/sciadv.aao2538
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