40年前の疑問がエクソソ−ムとマイクロRNAで解消!:未来を拓くmiRNA

2017-12-13 10:41 管理者:  Mashi

   今回は「エクソソ−ムとマイクロRNA」のお話ですが、個人的な話が入りますので、お忙しい方はスル−して下さい。実は、約40年前に聴いた奇妙な講演(夜の特別セミナ−)の話題です。ずっと頭の片隅で疑問がくすぶっていたのですが、最近40年ぶりに氷解しました。


話題の日時:約40年前の1978年、ある晩秋の夜でした。

話題の場所:アメリカワシントン郊外の国立がん研究所(国立衛生研究所(NIH)の敷地内)。

登場人物:Fidler博士(当時フレデリックがん研究所所属、後に全米がん学会の会長を務める)

演題:がん転移が促進される奇妙な現象・・・的な題だったと思う。忘れました。

発表内容:マウスメラノ−マの培養上清がメラノ−マの転移を促進。培養上清中に小胞が存在。小胞を健常マウスに注入するとメラノ−マの転移が促進。以上のシンプルな内容ながら、とても不可解な現象でした。


   当時の私には、大変衝撃的なセミナ−でした。がん細胞から小胞? 細胞を使わないのに転移の促進? Fidler博士自身も、「奇妙な現象で全く説明がつかない」と言っていたくらいですから。どこか怪しい。何か実験上の大きな間違いがあるのではないか? 我々の知らない大きなマジックが隠れているのだろうか? しかしその後研究の大きな進展もなく、気にしつつも忘れてしまいました。それから40年。最近になり「マイクロRNAを含むエクソソ−ムが、がんの転移に関係する」ことが新たに分かってきました。40年ぶりの疑問解消、マジックの種明かしです。


   エクソソ−ムと呼ばれる細胞外小胞は、発見当初から長い間細胞内老廃物の廃棄機構としてとらえられていました。しかし2008年頃より、エクソソーム内にmRNAやマイクロRNAが含まれ、それが他の細胞へ移行し機能している可能性が示され、研究が一気に加速しました。近年、エクソソームは様々な病気に関わっていると考えられており、たとえばがん細胞から放出されるエクソソームは、がん細胞の生存、悪性化、転移などに関与し、がん細胞に有利に働くように機能している可能性があります(図参照)。


   きみまろ風に言うと「あれから40年」。Fidler博士が講演した奇妙な現象も、最近がん細胞由来のエクソソ−ムを用いて追試されています。それは、マウスに肺転移性のがん細胞由来のマイクロRNA含有エクソソームを静脈に投与し、その後骨転移性のがん細胞を静脈に接種すると、細胞自体には肺転移能がないにもかかわらず、肺への転移をおこすという論文です。発見から数十年を経て明らかとなったマイクロRNAとエクソソームの関係は、これまで予想しなかった広がりを見せ、マイクロRNAを用いた診断法や核酸医薬の開発という新しい分野へと発展しつつあります。


   余談です。セミナ−後の夜遅く、Fidler博士の奇妙なセミナ−の内容を考えながら、車を運転して家路へ。そのせいか一時停止の標識を見落としてしまい、パトカ−に捕まるというオチがつきました。セミナ−の内容と共に忘れられない40年前の思い出です。(by Mashi)


参考文献:Hoshino A. et al., Tumour exosome integrins determine organotropic metastasis. Nature. 2015, 527, 329-335.  doi: 10.1038/nature15756.
コラム )
マイクロRNAはエクソソ−ムを介して他の細胞に伝達される
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