マイクロRNAによるがんの新しい診断法:未来を拓くmiRNA

2017-12-13 10:28 管理者:  Mashi

   前回のコラムで述べましたが、マイクロRNA(miRNA)は、様々な疾病との関連が注目されるようになってきました。がんとの関わりについては、2002年の最初の報告以来、多くの研究がなされ、がんに関わるmiRNAは、がん化を促進するものとがん化を抑制するものの2種類のタイプが存在することが明らかにされています。
 

   これまでにも、特定のマイクロRNAをがん細胞に移入すると細胞が正常化したり、逆に特定のマイクロRNAの阻害によりがん細胞の悪性度が増すことなどが知られています。また、がんの増殖や転移に必要な血管新生は、マイクロRNAが封入されたエクソソームが関係していることも分かってきました。マイクロRNAは、がんのメカニズムを解明したり、その診断・治療法を開発したりする上で重要な物質といえます。


   実際マイクロRNAは、がんを診断する新しいバイオマーカーになる可能性が最近期待されています。各臓器のがんは、それぞれ特徴的なマイクロRNAを分泌し、それが血液中に存在しています。しかもマイクロRNAは、画像診断や既存の腫瘍マーカーでは見つかりにくい初期の小さな腫瘍から、そのがんの特徴を反映することが分かりつつあります。


   マイクロRNAをマーカーとするがんの早期発見法については、国立がん研究センターや国立長寿医療研究センター、東レ、東芝、アークレイなど9法人・団体が参加して、日本医療研究開発機構(AMED)の「体液中マイクロRNA測定技術基盤開発プロジェクト」として2014〜2018年度で行われているところです。既に、国立がん研究センターのバイオバンクに保存された血液など約4万3000検体を用いて検証を行い、13種類のがんのマーカー候補となるマイクロRNAを計100種類強にまで絞り込むことに成功したそうです。


   候補となるマイクロRNAは各がん種につき数種類程度で、この手法によるがん検出の感度は高く、95%以上という結果が得られているそうです。マイクロRNAを用いて、早期発見を目指している13種類のがんは、胃がん、食道がん、肺がん、肝臓がん、胆道がん、膵臓がん、大腸がん、卵巣がん、前立腺がん、膀胱がん、乳がん、肉腫、神経膠腫です。


   また最近では、1つの成熟マイクロRNA に数塩基が付加されたり、削られたりした複数のイソ型(isomiRNA)が存在することが明らかになっています。典型的なマイクロRNAは数百の遺伝子を制御していますが、さらにイソ型miRNAでより詳細に遺伝子の発現パターンが制御されている可能性があります。そしてこのイソ型miRNAもがんの早期診断に使用できる可能性が指摘されています。ト−マスジェファ−ソン大学の最新の研究では、組織中のイソ型miRNAの発現のデータと機械学習をうまく組み合わせると、32種類ものがんの判別ができるそうです。


   現在臨床で使用されている腫瘍マ−カ−は、初期のがんを正確に診断することはできません。今後、血液からマイクロRNAを用いて、初期のがんを何種類も同時に診断できる日が来ることを期待しています。(by Mashi)


参考文献:Telonis AG et al., Knowledge about the presence or absence of miRNA isoforms (isomiRs) can successfully discriminate amongst 32 TCGA cancer types.  Nucleic Acids Res. (2017 );45(6):2973-2985.  doi: 10.1093/nar/gkx082.
コラム )
血中マイクロRNAを用いた新しいがんの診断法
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