最近注目されているマイクロRNAとは?:未来を拓くmiRNA

2017-12-13 10:21 管理者:  Mashi

   細菌のような原核生物から、真核生物を構成する動植物細胞に至るまで、生命活動はDNA、RNA、タンパク質を基本にしています。遺伝情報であるDNAとタンパク質を仲介するRNAについては、遺伝子配列をリボゾームへと伝えるmRNA(伝令RNA)、タンパク質合成装置であるリボソームを構成するrRNA(リボソームRNA)、mRNAに写し取られた遺伝暗号をタンパク質配列へと解読するtRNA(運搬RNA)などがよく知られています。


   しかし近年、細胞にはこれらとは異なるRNAが、数多く存在することが分かってきました。遺伝子の情報(タンパク質を作る配列)を持たないことから、ノンコーディングRNA(ncRNA)と呼ばれていますが、長さとしてはmRNAよりも長いものからマイクロRNA(miRNA)のように非常に短いもの(20塩基長程度)まで多種類あります。最近、理化学研究所ライフサイエンス技術基盤研究センターの研究者達は、国際共同研究グループとして、さまざまなヒト細胞で発現するマイクロRNA(miRNA)を網羅的に記載したアトラス(地図)を作成しました。miRNA発現アトラスはインターネット上で公開されており、誰でも利用できます。


   マイクロRNA (miRNA :microRNA) はゲノム上にコードされ、多段階的な生成過程を経て、最終的に20個程度の塩基がつながった小さなRNAです(図参照)。この鎖長の短いmiRNAは、機能性のncRNA (non-coding RNA, 非コードRNA:タンパク質へ翻訳されないRNAの総称) に分類されており、ほかの遺伝子の発現を調節するという、生命現象において重要な役割を担っていることから最近注目されています。


   マイクロ(mi)RNAは、mRNAの翻訳反応を物理的に阻害したり、mRNAの分解を促進したりして、さまざまな遺伝子発現を制御することから、マイクロRNAとmRNAは複雑な遺伝子発現制御ネットワークを形成していると考えられます。従ってマイクロRNAは、細胞の発生、分化、増殖、細胞死などの基本的な生命現象の調節に関わっており、哺乳類の場合、数千種類以上のマイクロRNAが遺伝子発現の30〜90%を制御していると想定されています。疾病との関連も注目されており、がん、心血管疾患、神経変性疾患、精神疾患、慢性炎症性疾患など多くの疾病の発症と進展に関わっていると考えられています。


   今回、理研の国際共同研究グル−プは、ヒトやマウスの100種を超えるさまざまな初代培養細胞に由来するRNAサンプルを利用し、マイクロ(mi)RNAの配列を詳しく解析しました。そして、既知のmiRNAだけでなく、新たなmiRNA候補の発現パターンやプロモーター配列を多数収録したmiRNA発現アトラスを作成しました。ヒトでは6,543個、マウスでは1,444個の新しいmiRNA候補を得ることもできたそうです。また既知のmiRNAの細胞特異的な発現について調べたところ、特定の細胞のみに強く発現するものと、特定の細胞で発現が抑制されているものが存在することが分かりました。


   今回作成されたmiRNAの網羅的アトラスは、今後のmiRNA研究の基礎デ−タとして、個々のmiRNA役割の解明や疾患との関連を研究する上でも、さらに核酸医薬への応用でも貴重な資料になると思われます。(by Mashi)


参考文献:Derek de Rie et al.,  An integrated expression atlas of miRNAs and their promoters in human and mouse.  Nature Biotechnology(2017), doi: 10.1038/nbt.3947
コラム )
マイクロRNA(miRNA)の一般的な生成過程
マイクロRNA(miRNA)の一般的な生成過程