肥満では老化したTリンパ球が出現し、脂肪炎症が加速する

2017-12-1 9:25 管理者:  Mashi

   中年男性に多い内臓脂肪型肥満は、糖尿病、心筋梗塞、脳卒中、心不全の発症だけではなく、感染症にも罹りやすく、がんや自己免疫疾患の発症にも密接に関係しています。本コラムでも肥満者が感染症にかかりやすいこと(2016-11-26)、肥満の脂肪組織炎症には遊走因子で集積した炎症性マクロファ−ジが関与すること(2015-4-20, -15)、脂肪肝(2017-7-31)などについてご紹介してきました。


   内臓脂肪型肥満は、若齢時から糖尿病や心血管疾患の発症のリスクを高めることが知られていますが、詳細なメカニズムは不明でした。最近、慶應義塾大学医学部の研究者達は、内臓脂肪型肥満による生活習慣病や免疫機能低下の原因に、免疫細胞(とくにTリンパ球)の老化が深く関与していることを初めて明らかにしました。研究グループが内臓脂肪型肥満と免疫老化の関連について検討した結果、高脂肪食を食べさせて太らせた若齢マウスの内臓脂肪組織にでは、健康な若齢マウスにはない老化したTリンパ球集団が短期間で大量に出現することを見いだしました。


   高脂肪食を食べさせて、太らせた若齢マウスの内臓脂肪組織のTリンパ球の解析をすると、痩せたマウスの内臓脂肪にはほとんど存在しない特徴的なTリンパ球(CD153陽性、PD-1陽性Tリンパ球)が現れて、わずか3〜4ヶ月の短い間に著しく増加しました。この特徴的なTリンパ球は、正常なTリンパ球の持つ獲得免疫応答能を失い、代わりに老化リンパ球の特徴を持ち、オステオポンチンという強力な炎症性サイトカインを大量に産生する性質を示しました。このことが脂肪組織の炎症状態を引き起こす一因と考えられます(図参照)。


   肥満した内臓脂肪組織内で新たに見つかったTリンパ球集団は、健康な若齢マウスには存在せず、加齢に伴ってリンパ組織中に出現し、高齢マウスの免疫老化の原因となるTリンパ球と非常に良く似た性質を持っていました。このTリンパ球を、通常食の健康な若齢マウスの内臓脂肪に移植すると、高脂肪食を食べ過ぎて太ったマウスに見られる内臓脂肪の過剰な炎症、インスリン抵抗性、血中オステオポンチン濃度の上昇が見られました。


   また、オステオポンチンが欠損したマウスに高脂肪食を与え、そのTリンパ球(CD153陽性、PD-1陽性Tリンパ球)を他のマウスに移植しても、内臓脂肪の過剰な炎症、インスリン抵抗性は生じませんでした。すなわち、この肥満由来の特徴的なTリンパ球から分泌されるオステオポンチンが、内臓脂肪の過剰な炎症、インスリン抵抗性を誘導していると思われます。今回ご紹介した研究は、内臓脂肪型肥満患者の生活習慣病の予防やアンチエイジングという観点からも貴重だと思います。(by Mashi)


参考文献:Shirakawa K, et al., Obesity accelerates T cell senescence in murine visceral adipose tissue. J Clin Invest. (2016) 126(12):4626-4639.  doi: 10.1172/JCI88606.
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肥満における脂肪炎症
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