超早期大腸がんのスクリ−ニング法の開発:質量分析計によるメタボロミクス解析

2017-11-24 7:32 管理者:  Mashi

   大腸がんは、大腸(盲腸、結腸、直腸、肛門)に発生する癌腫であり、罹患者数は男女合わせると胃がん、肺がんに次いで3番目であり、女性では2番目、男性では3番目に多いがんです。 2015年のデータによると、大腸がんは女性のがんによる死亡原因の1位であり、男性では3位となっています。男女とも、罹患率に対する死亡率は約半分であるため、大腸がんの生存率は比較的高く、さらに早期発見、早期治療ができれば、生存率を高く維持することができると考えられています。


   大腸がんの診断スクリーニング法としては、精度(感度)は低いが安価で身体への負担の少ない便潜血検査が日本では広く行われています。血液検査で腫瘍マーカー(CA19-9や癌胎児性抗原CEA)を調べる方法もありますが、病期が進行するまで異常値を示さない場合が多く、早期発見にはつながりにくいのが現状です。そのため、年齢や生活習慣および病歴などからみたハイリスクグループには、大腸内視鏡による検診が推奨されていますが、患者への負担が少なく、簡便で精度の高いスクリ−ニング法が望まれています。


   最近、島津製作所、神戸大学大学院医学研究科と国立がん研究センターは共同で、トリプル四重極型ガスクロマトグラフ質量分析計を用いて血液中の代謝物を網羅的に分析するメタボロミクス解析により、早期の大腸がんを高感度で検出できる新たなスクリーニング法を開発しました。トリプル四重極型ガスクロマトグラフ質量分析計は、ガスクロマトグラフで分離した試料を質量分析計で解析するシステムであり、高感度かつ高速分析が可能となり、1回の分析で400成分以上の解析ができます。メタボロミクス解析とは、生物の代謝物全体(メタボローム)を対象にした解析法であり、疾患による代謝物の変動を調べることで、新たな診断法の開発につながることが期待されています。


   さて、大腸がん患者282名(ステ−ジO、I、II)と健常者291名の血漿中の代謝物を網羅的に解析した結果、64種類の代謝物が検出され、そのうち29種類は患者と健常人で異なっていました。さらに大腸がん診断に利用できる8種類のマルチバイオマーカー (ピルビン酸, グリコール酸, トリプトファン, パルミトレイン酸, フマル酸, オルニチン, リシン, 3-ヒドロキシイソ吉草酸) を明らかにし、感度(病気のヒトが異常有りと判定される割合)、特異度(病気でない人が異常なしと判定される割合)とも96%を超える大腸がん診断予測式を作成することができました。この値は、現在臨床で使用されているあらゆる腫瘍マ−カ−よりもはるかにすぐれています。


   大腸がんは、見た目の形によって0〜5型に分類され、0型は表在型病変の肉眼的形態が軽度な隆起や陥凹を示すに過ぎないもの、1型は腫瘤が明らかに隆起した形態を示し、周囲粘膜との境界が明瞭なものですが、共に超早期がんといえます。驚くべきことは、これらの超早期がんでも、異常有りと判定できたことです。現在は、高価な機械で有り、どこでも手軽にできる技術ではありませんが、数をこなせる早期大腸がんのスクリ−ニング法として近い将来実用化されることを期待しています。(by Mashi)


参考文献:Shin Nishiumi et al., Investigations in the possibility of early detection of colorectal cancer by gas chromatography/triple-quadrupole mass spectrometry. Oncotarget. (2017) 8:17115-17126.  https://doi.org/10.18632/oncotarget.15081[/size]
コラム )
メタボロミクス解析による超早期大腸がんのスクリ−ニング法
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