250年間も間違えられ続けたサザエの学名:驚きの新種初登録

2017-11-10 7:27 管理者:  Mashi

   生物には基本的に学名がつけられています。学名のない種は、世界共通の命名規約に従い、新種として学名を命名、記載されなければ、正式に種として認知されたことにはなりません。命名には一定の規則があり、種名は属名+種小名で構成され、この表し方を二名法といいます。各国語で使用されている通称の生物名では無く、学名は全世界で通用するものであり、属以下の名を重複使用しない規約により、一つの種に対して認められる学名は一つだけです。(通常、学名はイタリック体もしくは下線を引きますが、本コラムでは機械の設定上できません。悪しからず。)


   さて、壺焼きなどで良く知られているサザエは、日本の代表的な食用貝類であり、棘のあるサザエと棘のないサザエがいます。波の荒い場所にいるサザエの棘は長く、静かな海のサザエには棘がないと言われることもありますが、実際は有棘型、無有棘型の決定は環境要因と遺伝子要因の両方に起因しているとのことです。サザエの学名は、英国人の博物学者によって命名されたTurbo cornutus が約250年間も使われていました。どんな辞典を見てもTurbo cornutusと記載されています。


   ところが今年になり、岡山大学大学院環境生命科学研究科の福田准教授は、欧米の古文献を再調査した結果、サザエがこれまで有効な学名をもたず、事実上の新種として扱われるべきであることを発見し、サザエの学名を新たに「Turbo sazae Fukuda, 2017」と命名したのです。学名の後ろには、命名についての情報(命名者や年号など)が付加することがあります。情報を付加することで、学名の示す生物をより明確にするためです。


   今日に至るまでサザエの学名は、Turbo cornutusが約250年間用いられてきましたが、実はこの名は中国に産する別種のナンカイサザエに相当し、サザエではなかったことが今回初めて判明したのです。ナンカイサザエは、日本人研究者により1995年に新種Turbo chinensisとして記載されましたが、結果的には誤っていたことになります。T. chinensis は T. cornutus の不必要な異学名であり、無効ということになります。(図参照)


   このようにサザエには、驚くべきことに史上一度も有効な学名が与えられたことがないことになり、事実上の新種扱いとなったのです!2種類のサザエが混同され、学名の間違いが広く盲信されてきたため、だれもがまさか日本の有名なサザエに名前がついていないとは思わなかったのです。研究者の先入観、思い込みにおよそ250年間も翻弄され続けたのです。18世紀から21世紀にわたる壮大な伝言ゲ−ムともいえます。


   余談です。サザエの諺その1。「夏のサザエは口ばかり」口先だけの人の意で、夏のサザエは身が痩せているのに殻の口は大きく見えることから。その2。「サザエに金平糖」お互いにツノを突き合せて理屈を述べ、譲らない者同士のこと。今の世の中にも通用する諺ですね。(by Mashi)


参考文献:Hiroshi Fukuda、Nomenclature of the horned turbans previously known as Turbo cornutus [Lightfoot], 1786 and Turbo chinensis Ozawa and Tomida, 1995 (Vetigastropoda: Trochoidea: Turbinidae) from China, Japan and Kore. Molluscan Research(2017), DOI: 10.1080/13235818.2017.1314741
コラム )
驚愕の新種、それは身近なサザエ(写真はウィキペディアより)
驚愕の新種、それは身近なサザエ(写真はウィキペディアより)