服薬指導で白血病の治療効果が上がった!:服薬アドヒアランスはムンテラの現代版!?

2017-11-3 9:27 管理者:  Mashi

   白血病に分類される慢性骨髄性白血病は、造血幹細胞の遺伝子が後天的に変異して、造血細胞が自律的な増殖をし、白血球や血小板が増加する血液腫瘍です。慢性骨髄性白血病は9番と22番の染色体の相互転座により形成されるフィラデルフィア染色体が特徴的であり、転座によって生じた融合がん遺伝子から産生されるチロシンキナーゼにより、細胞内シグナル伝達が活性化され白血病細胞が増殖します。


   慢性骨髄性白血病の治療は、日本では2005年に販売が開始されたイマチニブ(チロシンキナーゼ阻害薬)により治療成績は飛躍的に向上し、およそ9割の患者さんが寛解を得て通常の社会生活を送ることができるようになりました。イマチニブのような経口薬による治療では、患者さんが治療方針を十分に理解し、積極的に治療を受けようとする姿勢が重要です。


   近年、服薬遵守に対する用語は、コンプライアンスからアドヒアランスに変わりつつあります。 コンプライアンスは、医療者の指示による服薬管理の意味合いで用いられますが、アドヒアランスは患者さんの理解、意志決定、治療協力に基づいた内服遵守です。治療は医療者の指示に従うという考えから、患者さんとの相互理解のもとに行っていくものであるという考えに変化してきたことが、服薬遵守においてコンプライアンスからアドヒアランスという概念の変化につながっていると考えられます。


   慢性骨髄性白血病におけるイマチニブ(チロシンキナーゼ阻害薬)による治療においては、服薬アドヒアランスにより、寛解導入率が変化することが知られています。従って、イマチニブによる治療効果の向上には服薬アドヒアランスの向上が重要であると思われます。がん治療における経口薬の服薬アドヒアランスは、ばらつきが大きいことも報告されており、服薬アドヒアランスの向上には医療従事者の努力が必要だと思われます。


   さて、慢性骨髄性白血病患者の治療における服薬アドヒアランスを調べた最近の論文をご紹介します。慢性骨髄性白血病の患者さんに、3か月ごとの医師の診察に加え、1か月ごとに薬剤師が治療・服薬の必要性について指導を行いました。その結果、服薬指導により服薬アドヒアランスの継続が全員できるようになり、副作用などを訴える患者が減少、さらに寛解に至った患者は対照群の87.0%から95.6%に増加しました。このように患者さんへの適切な服薬アドヒアランスにより、大病においても副作用軽減、治療効果の向上があらわれるのは驚きであり、また大変素晴らしいことだと思います。


   前にも書いた余談です。ドイツ語のムント(口)とテラピ−(治療)を組み合わせた「ムンテラ」は、最近では医療従事者が患者や家族に対し、診断、治療について説明し、同意を得るという意味(インフォームドコンセント)で使われているようですが、30~40年前は、対話治療、くちこみ治療術、暗示療法のように、補助的な治療(プラシボ効果)の意味で使っていました。現代の服薬アドヒアランスは、まさにムンテラの現代版だといえます!! アロマにおいても、適切なアドバイスや情報提供と使う人の前向きな姿勢が、より効果を高めると期待されます。(by Mashi)


参考文献:Moulin S. M. et al., The role of clinical pharmacists in treatment adherence: fast impact in suppression of chronic myeloid leukemia development and symptoms.  Support. Care Cancer., 25, 951-955(2017). DOI: 10.1007/s00520-016-3486-6  
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服薬アドヒアランスはムンテラの現代版
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