ラベンダ−やパクチ−の精油成分(リナロ−ル)には放射線防護効果がある

2017-10-27 7:46 管理者:  Mashi

   最近、岡山大学中性子医療研究センターの研究グループは、古来より生薬や香料として広く用いられてきた精油の主成分であるモノテルペノイドの中に、放射線に対して防護効果を有するものがあるか調べました。精油成分の中で代表的な3 種類のモノテルペノイド(チモール、リナロール、メントール)について放射線防護効果を調べた結果、リナロールに強い放射線防護効果があることが明らかになりました。


   リナロールは、分子式 C10H18O で表されるモノテルペンアルコールの一種で、多くの植物の精油成分として見出され、たとえばローズウッド、リナロエ、ネロリ、ラベンダー、ベルガモット、コリアンダーに比較的多く含有されています。コリアンダーはセリ科の一年草で、パクチーとも呼ばれ、最近は香味サラダなどに人気がありますが、カメムシのような独特な風味を嫌う人も少なくないようです。リナロ−ルの作用としては、鎮静作用、抗不安作用、血圧降下作用、抗菌作用、抗真菌作用、抗ウイルス作用などがよく知られています。


   リナロ−ルには光学異性体の2種類(S体、R体)が有り、香りの質および強さに差があることが知られています。(S) 体を多く含むのはコリアンダーであり、甘いシトラス調の香りです。(R)体が多いのは、ネロリ、ラベンダー、ベルガモット、クラリセージであり、(R) 体はウッデイ調でラベンダー様の香りだそうです。慣用名のリナロールはリナロエに由来し、 (S)体の慣用名のコリアンドロールは(S)体の多いコリアンダーに、(R) 体の慣用名のリカレオールは、(R)体の多いローズウッドの現地名に由来します。(図参照)   


   さて研究者達は、500 マイクロモルのリナロール処理を施したマウスの細胞へ、致死的である5 グレイのX 線を照射しましたが、細胞は生存していました。また10グレイのX線照射により細胞のDNA鎖を切断する処理をしましたが、リナロ−ルを処理した細胞のDNA切断は約80%も阻害されました。チモ−ルやメント−ルにもDNA切断の阻害効果は観察されましたが、約20%程度でリナロ−ルほど強力ではありませんでした。細胞生存効果やDNA切断阻害効果には、リナロ−ルの抗酸化作用が関与していると研究者達は述べています。


   放射線に被曝すると白血球, 血小板減少等の骨髄障害,下痢, 嘔吐などの消化管障害が生じ、さらに高線量被曝では, 意識障害, 痙攣等の中枢神経障害を起こし死に至ります。放射線防護剤は、放射線事故などによる被曝の時に必要とされるほか、がん患者などへの放射線治療の時に過剰な被曝を防ぐために予防的に使用されたりします。日本薬局方収載の放射線防護剤には、システイン、アデニン、イノシン、グルタチオンなどがありますが、吐き気、アレルギー、血圧上昇などの副作用もあり、安全に使用あるいは摂取できる放射線防護剤が求められています。


   リナロールは、ラベンダーの主成分であり、香料としても広く日用品に使用されていますし、また香味野菜として親しまれているパクチーにも含まれています。ただ今回は試験管内の結果で有り、生体内でも効果があるのか、酸化されたリナロ−ルが炎症・アレルギ−を引き起こさないかなど、実用化に向けてさらなる検討が期待されます。また紫外線防御作用についても期待されます。(by Mashi)


参考文献:Ken-ichi Kudo, Tadashi Hanafusa and Toshiro Ono. In vitro analysis of radioprotective effect of monoterpenes. Journal of Radioanalytical and Nuclear Chemistry, DOI 10.1007/s10967-017-5268-0, 2017
コラム )
リナロ−ルの光学異性体
リナロ−ルの光学異性体