ストレスによる突然死の分子メカニズム

2017-10-16 7:21 管理者:  Mashi

   慢性的なストレスは、消化器や心臓などに疾病を誘導したり、悪化させることはよく知られていますが、そのメカニズムは意外と分かっていません。本コラムでもストレスと病気について述べてきました(神経ストレスは胃がんを本当に進行させている!! 2017-4-25、心的外傷後ストレス障害(PTSD)への対処法:恐怖記憶は脳内炎症の抑制で改善!?  2017-2-13)。最近、北海道大学遺伝子病制御研究所の研究グループが、マウスに慢性的なストレス(睡眠障害や過酷な環境)をかけたあと、脳内に神経障害性の免疫細胞を移入すると、脳の血管に微小な炎症が生じ、消化器や心臓の機能障害から突然死に至ることを世界で初めて発見しました。


   マウスの多発性硬化症モデル(実験的自己免疫疾患性脳脊髄炎:EAE)では、中枢神経に発現する分子と反応する細胞障害性のT細胞が出現します。その障害性T細胞を正常なマウスの静脈内に接種すると、そのマウスにも実験的自己免疫疾患性脳脊髄炎EAEの症状が現れます。研究者達は、慢性的なストレス(睡眠障害や過酷な環境)で飼育したマウスに、神経細胞障害性のT細胞を移入したり、ストレスに関連する脳領域を電気的に遮断したり,サイトカインを投与したりすることにより、慢性的なストレスと実験的自己免疫疾患性脳脊髄炎EAEとの関連性を調べました。さらに、胃や十二指腸、心臓などの機能的な障害を薬理学的、免疫学的な手法で解析しました。


   その結果、慢性的なストレスを誘導したマウスに神経細胞障害性T細胞を移入すると、通常の実験的自己免疫疾患性脳脊髄炎EAEの症状である尾部や後肢の麻痺は起こらず、約7割のマウスが突然死してしまいました。神経細胞障害性T細胞の移入のみ、または慢性的なストレスだけでは、死亡するマウスはいませんでした。この突然死の原因を解析すると、胃や十二指腸の炎症による出血が引き金となり、心臓の機能が低下した結果であることが分かりました。


   さらに障害性T細胞が中枢神経系のどこから侵入したか解析したところ、脳内の第3脳室,海馬,視床に囲まれた特定部位の血管に移動していることが分かりました。この部分に免疫細胞が集積するためには、ストレスに反応する交感神経の活性化が重要であり、実際、脳のこの部位を電気的に破壊すると、特定の血管への免疫細胞の集積が見られなくなり、突然死も抑制されました。特定血管周囲で生じた微小炎症により迷走神経が活性化され、胃や十二指腸の炎症、心機能の低下が起きることが分かりました。(図参照)


   このように、脳内の特定血管に生じた微小炎症が、新規の神経回路を活性化させ、ストレス反応を大きく増強し、さらに胃・十二指腸・心臓の機能低下を招き、最終的に死に至ることを示しています。「病は気から」とも言いますが、ストレスにはやはり気をつけなくてはいけないようです。(by Mashi)


参考文献:Arima Y, et al., Brain micro-inflammation at specific vessels dysregulates organ-homeostasis via the activation of a new neural circuit. eLife. (2017) Aug 15;6. pii: e25517. doi: 10.7554/eLife.25517
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ストレスは突然死を招く
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