血糖値異常(糖尿病)の人は、大腸粘膜への細菌侵蝕が進んでいる

2017-10-2 7:38 管理者:  Mashi
これまでにもコラムで、腸内細菌と健康状態や疾病の関連についてご紹介してきました。
たとえば、
・腸内細菌→短鎖脂肪酸→G蛋白共役型受容体→抗肥満 !! 2016-9-19

・腸内細菌や酪酸は、抗炎症やがんの進展に関与する制御性T細胞を誘導する2016-9-25

・大酒飲みの腸内フロ−ラはどうなっている? 2016-9-30

・ト−タル ガット ケア :腸内細菌と自己免疫病との関わり  2016-11-20

・腸内エコシステムへの新しいアプロ−チ:メタボロゲノミクス2017-3-11

・動脈硬化の予防・改善も腸内フロ−ラから!? 2017-3-28

・母乳で育つ乳児にビフィズス菌が多い理由 2017-6-19

これらは主に腸内細菌の種類や増殖について報告されているものですが、細菌と腸管の上皮細胞との関わり合いに関する研究はあまりありません。最近、アメリカジョ−ジア州立大学の研究者達が、腸内細菌の大腸粘膜への侵蝕が健康状態と関連することを報告しています。腸内細菌の種類や数ではなくて、腸管へのアクセス状態が問題になるという、新しい視点から見た腸内細菌です。


   研究者達は、がん検診にきた大腸内視鏡検査受診者42名の大腸組織試料を検査しました。42名のうち41名は男性で、男性のうち14名は糖尿病でした。検査には、焦点距離がばらばらになるようなぶ厚い試料であっても、ピンボケしない像が得られる高解像度を特徴とする共焦点レーザー顕微鏡を用いました。ちなみに顕微鏡とはいえ,一台数千万円します。その高価な顕微鏡を用いて、検査試料中の細菌と大腸の上皮組織との距離を測定し、大腸粘膜層への細菌侵蝕を判定しました。すなわち上皮と細菌の距離が近いほど、細菌侵蝕が進んでいることになります。


   その結果、上皮と細菌間の距離は、血糖値、HbA1c値(過去の血糖値を反映し糖尿病の判定に用いられる)、BMI値(欧米では30以上、日本では25以上が肥満)、の全てと逆相関を示しました。すなわち各種マ−カ−値が高い人ほど、細菌と大腸組織は近接した距離にあったということです。たとえば、血糖値が高い糖尿病の人の上皮と細菌間の距離は、平均で約10μmですが、糖尿病でない人の平均は約30μmと約3倍の違いがあります。それぞれの人の値を記入後、集団円で模式的に示した図から分かるように、糖尿病でない人に比べ、糖尿病患者の集団は上皮と細菌間の距離が短い人が多いことが分かります。


   この糖尿病の人(血糖値が高い人、HbA1c値が高い人、BMI値が大きい人)の上皮と細菌間距離が近いのは、病気の原因なのか結果なのかは不明です。しかしながら距離が短い、すなわち細菌の大腸粘膜層への侵蝕が大きいということは、腸管上皮細胞への影響が大きいと想定されます。糖尿病患者は様々な感染症にかかりやすいことや腸内フローラがインスリン抵抗性の原因と考えられていますが、このような細菌の大腸粘膜への侵蝕にヒントがあるのかも知れません。

   また最近リ−キ−ガット(腸管壁浸漏症候群:腸管壁が過度の透過状態にあることにより腸壁のバリア機能が低下し、分子の大きい未消化の食物や毒素,細菌などが腸から血流に通り抜けてしまう状態)が注目されていますが、今回の研究が関連しているかも知れません。腸内フロ−ラの働きを考えるときは、生息している細菌の種類だけではなく、細菌の大腸粘膜への距離・侵蝕状況も大切なようです。(by Mashi)


参考文献:Benoit Chassaing et al., Colonic Microbiota Encroachment Correlates With Dysglycemia in Humans. Cellular and Molecular Gastroenterology and Hepatology, Volume 4, Issue 2, Pages 205–221(2017), doi.org/10.1016/j.jcmgh.2017.04.001
コラム )
糖尿病の人は大腸粘膜への細菌侵蝕が進んでいる
糖尿病の人は大腸粘膜への細菌侵蝕が進んでいる