歯周病菌によるアルツハイマー病誘発の可能性

2017-9-18 7:18 管理者:  Mashi

   厚労省の最近の発表によると、認知症患者は2025年には700万人となり、65歳以上の高齢者の5人に1人(20%)がかかると推察されています。軽度認知障害者を加えると、1300万人になり、なんと高齢者の3人に1人(約30%)が問題を抱えることになります。認知症患者のうち、約6割以上がアルツハイマ−病と診断されています。残念ながら、アルツハイマ−病は原因も治療法も不明ですが、発症の約25年前から脳にβ-アミロイド蛋白の蓄積が認められ、約15年前から脳の海馬が委縮しはじめ、約5年前にはβ-アミロイドの蓄積がピークとなり、軽い物忘れが始まり発症に至る25年間の長い時間経過をたどります。


   コラム(アルツハイマー病は真菌などの微生物感染症の名残!? : 2016-10-26)でも紹介しましたが、動物の脳に感染症を引き起こしたところ、β-アミロイド蓄積がおこり微生物を閉じ込めていることが観察されました。このようにアルツハイマー病には長期間にわたる感染症の既往が基礎にあり、そのことがβ-アミロイド蓄積の要因となっているという指摘が最近注目されています。このような中、九州大学大学院歯学研究院の研究グループは、蛋白分解酵素カテプシンBが、歯周病原因菌であるジンジバリス菌(Porphyromonas gingivalis)の菌体成分を全身に慢性投与することにより誘発されるアルツハイマー様病態の原因酵素であることを初めて明らかにしました。


   近年、重度歯周病の罹患と認知機能低下との相関性が報告され、実際歯周病菌ジンジバリス菌の菌体成分がアルツハイマー病患者の脳内に検出されることから、ジンジバリス菌が脳内で炎症を引き起こし、認知症の誘発、悪化を招くと考えられますが、詳細なメカニズムは不明でした。そこで研究者達は、若年ならびに中年のマウスと、炎症反応に関与する蛋白分解酵素カテプシンB の欠損マウスを用い、全身性に投与したジンジバリス菌の菌体成分が学習行動や脳炎症に及ぼす影響を解析しました。


   その結果、ジンジバリス菌の菌体成分を全身に慢性投与(5週間)した中年マウスでは、学習・記憶脳低下、脳内のミクログリアの活性化による脳炎症ならびに海馬ニューロン内にβ-アミロイドの蓄積が認められました。一方、カテプシンB を欠損した中年マウスではジンジバリス菌の菌体成分を全身に慢性投与を行っても、アルツハイマー様病態は生じませんでした。さらに驚いたことに、若年マウスでは、ジンジバリス菌の菌体成分を全身に慢性投与されても、このようなアルツハイマー様病態は認められなかったそうです。中年マウスがジンジバリス菌の菌体成分によって全身性に曝露されると、活性化された脳内ミクログリアがカテプシンB 依存的に炎症性サイトカインを産生分泌し、ニューロンにおけるカテプシンB に依存したβアミロイドの産生・蓄積ならびに学習・記憶能低下など、アルツハイマー様病態を引き起こすと考えられます。


   従来、アルツハイマ−病の原因が特定されにくい理由として、“症因子による長期間暴露の可能性(長期間の弱い刺激)、原因が多因子の可能性(異なるいくつもの原因がある)、8彊が複合である可能性(複数の因子が重なると発症)、ご超要因の影響(食品や生活習慣)、グ篥鼠廾の寄与(いわゆる体質、一部の遺伝子の関与が疑われている)、β召亮隻造留洞繊陛尿病や高血圧の人は頻度が高い)など複雑、多様なことが想定されます。 今回ご紹介した、「歯周病菌によるアルツハイマー病誘発」も全ての患者さんの原因になっているわけではなく、患者さんの中には歯周病菌が原因になっている場合もあるという理解が適切だと思われます。いずれにせよ、口腔衛生はとても大切だと思われます。おろそかにすると、25年後に大きな試練が待っているかも知れません。私は手遅れ?かも。(by Mashi)


参考文献:Zhou Wu  et al., Cathepsin B plays a critical role in inducing Alzheimer’s disease-like phenotypes following chronic systemic exposure to lipopolysaccharide from Porphyromonas gingivalis in mice. Brain, Behavior, and Immunity. Volume 65, Pages 350-361 (2017)  doi.org/10.1016/j.bbi.2017.06.002
コラム )
年配者では、歯周病菌によりアルツハイマー病が誘発される
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