思いもかけない働きが免疫細胞に:ナトリウム量に反応するマクロファ−ジ

2017-9-11 7:11 管理者:  Mashi

   生体内では、ナトリウムイオン(Na+)を主とする電解質と水分(体液)のバランスはほぼ一定に保たれています。このバランスが破綻すると、脱水、浮腫さらには高血圧を引き起こしたりします。これまで、生体内のナトリウムイオン量と体液量のバランスは、腎臓がナトリウムイオン排出量と水分の排泄量を調節することで一定に保たれている、と教科書レベルでは考えられてきました。ところが最近ナトリウムイオンの調節について、思いもかけなかった知見が次々と明らかになってきました。その一つが免疫細胞とナトリウムイオンの関係です。


   さて、生体がナトリウムイオンを保持する際には、皮膚や筋肉が蓄積部位であることが最近明らかにされています。さらに皮膚組織のナトリウムイオン濃度が、心肥大、高血圧、感染症などの疾患とも関連していることが報告されており、皮膚におけるナトリウムイオン量の調節が注目されています。では皮膚においてどのようにナトリウムイオン量が調節されているのでしょうか?


   マウスに高塩食を与えると、皮膚の間質にナトリウムイオンが蓄積し、間質の浸透圧が上昇します。この浸透圧上昇を、免疫細胞であるマクロファージが感知すると、転写因子TonEBPを増大させます。その結果、皮膚のリンパ管の過形成が誘導され、リンパ管を介してナトリウムイオンが排出されます(図参照)。マクロファージの転写因子を除去すると、ナトリウムイオンの排出は阻止されます。このように、皮膚という局所においては、腎臓ではなく、免疫細胞のマクロファージがナトリウムイオン量の調節に関与しています。


   もう一つ興味深いことが分かってきました。高ナトリウムイオンでマクロファージの転写因子TonEBPが活性化されると、一酸化窒素(NO)合成酵素も活性化され、NOが産生されてきます。NOは平滑筋に働き血圧を低下させたり、細菌の殺菌物質としても作用します(図参照)。皮膚局所におけるナトリウムイオン量の上昇は、細菌に対するマクロファージの殺菌能力を高めている可能性があります。


   以上ご紹介してきたように、皮膚という局所では、腎臓ではなく免疫細胞のマクロファージが、ナトリウムイオンの調節に関与し、ナトリウムイオンを除去したり、血圧低下に関与すると共に、感染防御力を発揮するといういくつもの大切な働きをしていることが明らかになりました。原始的な免疫細胞といわれるマクロファージは、獲得免疫や自然免疫という免疫学的な作用だけではなく、ナトリウムイオン量の調節という生体の恒常性維持にも関与しているようです。皮膚のむくみ・お手入れはマクロファ−ジのケアから!?(by Mashi)


参考文献:北田研人、塩の排出リズムと免疫・代謝・高血圧のクロスト−ク、医学のあゆみ261, 807-812 (2017)
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マクロファージの電子顕微鏡写真(photoed by Mashi)
マクロファージの電子顕微鏡写真(photoed by Mashi)