真菌(カンジダ菌)は肝障害を引き起こすことが新たに分かった

2017-8-13 7:11 管理者:  Mashi

   カンジダ菌は、ヒトの口腔や消化管、皮膚、膣などに存在する常在性真菌です(図参照)。通常、体に悪影響を与えることはあまりありませんが、加齢、疲労、ストレスなどにより、免疫の低下やホルモンバランスなどが崩れると、異常に増殖し、かゆみなどの皮膚症状やさまざまな不定愁訴が現れ、健康が損なわれます。帝京大学医真菌研究センタ−では、口腔の衛生管理を目的に、カンジダ菌を抑制する抗菌アロマキャンデ−を開発してきました。カンジダ菌によりリウマチ、ぜん息、動脈硬化、アトピ−性皮膚炎など多くの疾患の発症や悪化に関わっていると推定されていますが、ほとんど分かっていません。そのような中で、カンジダ菌が肝障害を引き起こすことを初めて明らかにした論文をご紹介します。


   日本においては、肝炎ウイルスの感染を原因とした肝がん(肝臓がん)の発症が多く見られますが、欧米ではアルコールの過剰摂取によるアルコール性脂肪性肝炎(ASH)が大きなウエイトを占めています。そして今後は、世界的に非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)が肝がんの主な原因になると考えられています。ASHやNASH患者においては、腸内に生息するカンジダ菌が肝臓に到達することが報告されています。また、ASHやNASH患者の肝細胞では、通常は細胞質に存在する特定の酵素(トランスグルタミナーゼ)が細胞核に局在することで肝細胞死を引き起こし、肝障害を悪化させることが判明しています。しかし、肝臓に到達したカンジダ菌がこの病態形成機構にどのように関与するのか分かっていませんでした。


   最近、理化学研究所と東京工業大学の共同研究グループは、肝臓に侵入した真菌(カンジダ)が活性酸素、特にヒドロキシルラジカルを作り、その酸化ストレスを介して特定酵素の局在化が変化し、最終的に肝細胞の死、肝障害へ進むメカニズムを明らかにしました。研究者達は、肝臓への真菌感染のモデルとして、病原性カンジダ菌(カンジダ・アルビカンス Candida albicans もしくはグラブラータ Candida glabrata)をヒト肝細胞株と共に培養し、経過を観察しました。共培養を開始して24時間後には特定酵素(トランスグルタミナーゼ)の核局在と活性化が観察され、さらに、共培養開始から48時間後には細胞死が誘導されました。一方、病原性のないパン酵母(カンジダに近縁の真菌)と肝細胞との培養では、肝細胞死は観察されませんでした。


   肝細胞の死は、培養細胞だけではなく、カンジダ菌を感染させたマウスの肝細胞においても観察されました。カンジダ菌による活性酸素ヒドロキシルラジカルの産生、関与は、ヒドロキシルラジカルなどの活性酸素の産生に働くNOX遺伝子を欠損した変異カンジダ菌では、肝細胞死の現象が見られないことから証明されました。さらに、カンジダ菌を静脈注射したマウスを調べた結果、肝臓における活性酸素と特定酵素の核局在化が見られました。まとめると、肝臓へのカンジダ菌感染 → 活性酸素産生 → 特定酵素の撹乱、局在化 → 肝細胞死 → 肝障害発症 となります。我々の想像以上に、カンジダ菌は体内で悪さをしているのかも知れません。(by Mashi)


参考文献:R Shrestha et al., Fungus-derived hydroxyl radicals kill hepatic cells by enhancing nuclear transglutaminase. Scientific Reports(2017), doi: 10.1038/s41598-017-04630-8
コラム )
菌糸を伸ばし増殖するカンジダ菌(Candida albicans)の顕微鏡写真(photoed by Miki)
菌糸を伸ばし増殖するカンジダ菌(Candida albicans)の顕微鏡写真(photoed by Miki)