体内のマッチポンプ:マスト細胞はアナフィラキシーを起こし鎮める

2017-8-6 7:21 管理者:  Mashi

   様々な異物に対して起きるアレルギ−反応の中には、比較的短時間(多くは30分以内)で症状が出る即時型アレルギ−反応があります。その中でも発症後、極めて短い時間のうちに全身性にアレルギー症状が出るアナフィラキシーは、血圧の低下や意識障害などを引き起こし、場合によっては生命を脅かす危険な状態になることもあります。この生命に危険な状態をアナフィラキシーショックといいます。アナフィラキシーショックは、ハチ毒、ソバなどの食品、薬物など様々な異物(抗原)で引き起こされますが、実際アナフィラキシーショックで毎年およそ100名弱の方が命を落としています。過去にハチ毒やソバでアナフィラキシーを起こした人には、予防的にアドレナリン自己注射薬(エピペン)の携帯が推奨されています。


   アナフィラキシ−は、抗原とIgE抗体の複合体がマスト細胞(肥満細胞)表面に結合し、マスト細胞から炎症を起こす様々な物質が放出されることにより起きますが、最近アナフィラキシ−を起こすマスト細胞が、実は鎮める働きもしていることが分かりました。マスト細胞は、積極的に炎症・アレルギ−を起こし、その後その行き過ぎを抑えるために生理活性物質(脂質メディエ−タ−)のプロスタグランジンD2も産生していることが東京大学の研究グル−プから報告されました。そう、マスト細胞はいわば生体内のマッチポンプ細胞です(図参照)。


   かつて政界でマッチポンプ事件が話題になったことがあります。マッチ自体が死語になりつつある現代では、何のことか良く分からない方もいると思いますが、マッチポンプとは、「自分で騒ぎを起こし(発火)、抑える(消火)という」自作自演の手法・行為の比喩で使われます。


   さて、研究者達が実験的にマウスにアナフィラキシー反応を起こしたところ、マスト細胞から産生される生理活性物質のプロスタグランジンD2が血管透過性の急激な上昇を抑え、過度なアナフィラキシーを抑えることを発見しました。つまり、マスト細胞はヒスタミンやロイコトリエンといった炎症物質を大量に放出することでアナフィラキシー反応を引き起こすとともに、その反応の行き過ぎを抑えるためにプロスタグランジンD2を同時に産生していることが示されたのです。


   さらに全身やマスト細胞特異的にプロスタグランジンD2の合成酵素を欠損させたマウスや、プロスタグランジンD2の受容体を欠損させたマウスでは、血管透過性の急激な上昇を伴う血圧や体温の低下などのアナフィラキシー症状が劇的に悪化しました。これらのことからもアナフィラキシーを抑えるプロスタグランジンD2の重要な役割が明らかになりました。マスト細胞自身が、炎症を起こし鎮めるというマッチポンプの働きをして、生体の恒常性維持に大きな役割をしていることになります。(by Mashi)


参考文献:Tatsuro Nakamura et al., Mast cell-derived PGD2 attenuates anaphylactic reactions in mice. The Journal of Allergy and Clinical Immunology(2017), http://www.jacionline.org/article/S0091-6749(17)30476-1/abstract, DOI: http://dx.doi.org/10.1016/j.jaci.2017.02.030[/size]
コラム )
マスト細胞は生体内のマッチポンプ
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