脳内の免疫細胞は発達期の脳回路を造る

2017-7-17 7:11 管理者:  Mashi

   脳には薬などの異物が簡単に侵入しないように血液脳関門があり常に監視しています。では脳内は無法地帯かというと、もちろんそんなことはなく、免疫系の細胞も存在し常時脳内を監視しています。それはミクログリア細胞と呼ばれるマクロファ−ジ系の免疫細胞であり、貪食機能や炎症反応などマクロファ−ジと類似の機能を持っています。ミクログリアはグリア細胞(ミクログリア、アストロサイトなど脳内に存在する神経細胞以外の細胞群で、神経細胞よりも多く存在している)の一種で、脳内の細胞の約10%を占めています。通常は細胞の突起を四方八方に伸ばし、神経シナプスと接触したりすることで神経細胞が正常かどうか確認していると考えられています。また非常時には活性化し、突起が短くなったアメー バ状の形態に変化して、組織の修復や死細胞の除去などの貪食作用を示します。


   ミクログリアは、脳卒中などの障害で死んだ細胞などを貪食、除去したり、神経回路が正常に働いているかチェックする作用を持っていることが知られていますが、最近生理学研究所と山梨大学の研究グループは、ミクログリアが神経細胞に接触して、神経細胞間のつなぎ目(シナプス)の新生を促し、大脳皮質の脳回路を造る大切な役割を担っていることを発達期のマウスを用いて明らかにしました。


   ミクログリアは、脳内から取り出すと活性化し、状態が変化してしまうことから、脳内本来の状態でミクログリアの機能を調べることは困難でした。しかしながら、生きた動物の脳内の細胞を観察することができる特殊な顕微鏡(2光子励起顕微鏡)を用いることで、ミクログリアが神経細胞の突起に接触すると、神経細胞の接触した箇所に、将来の新たなシナプスの元になると考えられる「フィロポディア」という構造が形成され、その後実際にシナプスへ成長していく様子が観察されました(図参照)。


   ミクログリアを特異的に取り除いた発達期の遺伝子改変マウスでは、シナプスの数が減少することからも、ミクログリアがシナプスの形成に関わっているということが確認されました。さらに、発達期で見られたミクログリアによるシナプス形成が、発達期の一過性の出来事なのか、または成熟後も脳回路の機能に影響を与えるのか調べたところ、成熟期になっても大脳皮質の情報伝達機能の構築に関係していることが明らかになりました。


   様々な発達障害でシナプスの形成異常が知られていますが、発達期における神経回路形成のメカニズムとして脳内免疫細胞であるミクログリアの関与が明らかとなったことで、様々な疾病の解釈、予防、治療に役立つことが期待されます。以前のコラム(2017-2-13)で、PTSD(心的外傷後ストレス障害)は、活性化しすぎた脳内ミクログリアが原因になっている可能性について述べましたが、脳内の免疫環境が様々な脳機能に係わっている可能性があると思われます。それにしても発達期の脳内免疫状態は大切なようです。「三つ子の魂百まで」、これまた至言ですね。(by Mashi)


参考文献:Miyamoto A. et al., Microglia contact induces synapse formation in developing somatosensory cortex. Nature Communications 7 : 12540 doi: 10.1038/ncomms12540 (2016)
コラム )
脳内の免疫細胞ミクログリアはシナプス形成に関与する
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