手ごわい乳がん細胞を殺すショウガの成分

2017-7-10 11:30 管理者:  Mashi

   いくつかの精油やその成分が試験管内でがん細胞を破壊することは報告されていますが、がん細胞特異的なのか、また生体内で実際にがんを縮小させられるのか、明確にされていないことが大部分です。今回ご紹介する論文も、試験管内という限られた現象ですが、手ごわい乳がん細胞を標的にしているという特徴があります。


   先日のコラム(2017-7-3)でもご紹介したように、現在乳がんは日本女性におけるがん発症の第1位であり(死亡は女性第5位)、他のがん種に比べ若年層からも発症しやすいという特徴があります。乳がんにはいくつかの特徴的な細胞表面構造があることから、通常の手術、放射線治療、がん化学療法に加え、細胞表面構造を標的にした治療も行われています。特徴的な細胞表面構造とは、エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、がん遺伝子HER2(受容体型チロシンキナ−ゼ、上皮増殖因子受容体2)の3種類です。人により異なる乳がん細胞は、この3つの細胞表面マ−カ−を0個から3個持っています。マ−カ−を1つも持っていない乳がん細胞は、トリプルネガティブ乳がん細胞と呼ばれ、治療の選択肢が少なくなる手ごわい乳がん細胞です。


   ショウガの根茎には、ジンゲロール類などの辛み成分を含む様々な生物活性物質が豊富に含まれています。また6-ジンゲロールの抗がん活性など、ジンゲロ−ルに関する多くの研究は、今まで6-ジンゲロールに焦点が当てられてきました。最近カナダの研究者達は、ヒトおよびマウスの乳がん細胞を用いて、その増殖が阻害されるか、6-ジンゲロール、8-ジンゲロール、10-ジンゲロールを比較し、新たに10-ジンゲロ−ルに強い抗乳がん活性を見つけました(図参照)。


   10-ジンゲロールは6-ジンゲロールより強い細胞破壊活性を示し、さらに3個の細胞表面マ−カ−を持たないトリプルネガティブヒト乳がん細胞株2種類とトリプルネガティブマウス乳がん細胞2種類に対しても強い増殖の阻害を示しました。詳細な作用機構は不明ですが、乳がん細胞のDNA複製時期(S期)で細胞分裂を止め、さらにミトコンドリアの外膜の透過性の上昇、ミトコンドリアシトクロムCの放出などアポトーシス(細胞死)の誘導を引き起こしていることが報告されています。


   実際に生体内で効果を示すのかまだ分かりませんが、細胞表面マ−カ−がなく治療方法の選択肢が限られているトリプルネガティブ乳がんに対する新しいアプロ−チのヒントになるかも知れません。ジンゲロ−ルは、調理などで水酸基を失い(脱水反応)ショウガオ−ルに変化しますが、10-ショウガオ−ルなどの抗乳がん活性も知りたいところです。(by Mashi)


参考文献:Bernard MM., et al., [10]-Gingerol, a major phenolic constituent of ginger root, induces cell cycle arrest and apoptosis in triple-negative breast cancer cells. Exp Mol Pathol. 2017 Mar 16;102(2):370-376. doi: 10.1016/j.yexmp.2017.03.006.
コラム )
ジンゲロ−ルとショウガ(Mashi 農園)
ジンゲロ−ルとショウガ(Mashi 農園)