飛べないテントウムシは宝物;天敵製剤という生物農薬

2017-6-26 7:28 管理者:  Mashi

   それは2年前の初夏のことでした。ユキヤナギの若枝についたアブラムシを殺虫剤で駆除しようとしたところ、全く死ななかったのです。それからしばらくして、殺虫剤抵抗性のアブラムシが全国に拡がっている、というニュ−スが話題になり納得しました。抗生物質の多用により耐性を獲得した細菌が出現するように、同じ作用機構の殺虫剤を多用すると、害虫の大部分が死ぬような濃度を使用しても、生き残る殺虫剤抵抗性の害虫が出現する事があります。多種類の薬に耐性を示す多剤耐性細菌が問題になるように(コラム:ス−パ−耐性菌と抗菌アロマ、2016-6-30)、多くの殺虫剤などに対して抵抗性を持つ病害虫も出現し問題になることもあります。


   アブラムシ(油虫)(高齢の方は、油虫というとゴキブリのことだと勘違いすることがあります。昔はゴキブリのことを油虫と言ったので。)はアリマキとも呼ばれ、大きさが1mm 程度の昆虫です(図参照)。口針を植物に突き刺して、栄養豊富な汁(師管液)を吸って集団で生活し、居場所からほとんど移動しません。限られた時期に小さな翅を持つ個体が出現し、他の場所に飛んでいくことがありますが、通常飛ぶことはありません。アリと共生し、分泌物(甘露と呼ばれる糖分豊富な排泄物)をアリに与えるかわりに外敵から守ってもらう習性や、卵胎生単為生殖(オスは不要)により、自分と全く同じメスを産み、短期間で爆発的にその数を増やすことができます。アブラムシは植物を弱らせ、ウイルス病を媒介する、農業においても園芸においても代表的な害虫です。


   では害虫であるアブラムシを、殺虫剤以外で駆除する方法はあるのでしょうか? その一つは、天敵を利用した生物的防除法です。テントウムシやカゲロウの仲間はアブラムシの天敵として知られており、たとえばナミテントウは1日にアブラムシを100個体以上食べることもある大食漢だそうです。成虫だけでなく幼虫もアブラムシを好んで食べます。そこで現場検証してみました。小さな庭(ガ−デンマ−シ−)のアブラムシのついた木々を探索したところ、ナミテントウの幼虫が実際いました!! いました!! 嬉しくなり接写で撮影しました(図参照)。残念ながら捕食中の現場は撮影できませんでしたが。


   さて天敵であるテントウムシの利用ですが、残念ながら成虫は飛んでいってしまい定着できません。そこで農研機構の研究者達は、飛翔能力の弱いナミテントウを自然界から見つけ、それらを根気よく30代にわたり交配と選択をくり返し、飛べないナミテントウの育成に成功しました。現在は、施設野菜類用の天敵製剤として販売されているそうです。この製剤にはナミテントウの幼虫が封入されており、成虫になっても飛ばないので作物上に長く定着し、数日後にはアブラムシの減少が観察されるそうです。農作物は、ナミテントウのような天敵を使った生物農薬でも守られているのですね。(by Mashi)


参考文献:1) 土田聡、抵抗性アブラムシ最新事情、現代農業2017年6月号(減農薬特集)、週刊第848号、86-89.  2) 世古智一、飛ばないナミテントウの実力、現代農業2017年6月号(減農薬特集)、週刊第848号、116-118.
コラム )
アブラムシとナミテントウの幼虫(photos by Mashi、ガ−デンマ−シ−にて)
アブラムシとナミテントウの幼虫(photos by Mashi、ガ−デンマ−シ−にて)