ピロリ菌とEBウイルスの重複感染は胃がん発症の高リスク

2017-5-12 7:58 管理者:  Mashi

   現在、胃がんは世界的にも部位別がん死亡の第二位を占めています。また日本を含む東アジアは、胃がんの好発地域として知られ、日本では毎年約5万人の方が胃がんで亡くなっています。日本人の胃がんの大部分は、ピロリ菌の慢性感染が原因となり発症すると考えられています。ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)は、ヒトの胃粘膜に慢性感染する病原性細菌であり、中年以上の日本人の大多数に感染しています。ピロリ菌の慢性持続感染は、萎縮性胃炎ならびに胃潰瘍などの胃粘膜病変を引き起こし、胃がん発症の危険率を有意に高めることが示されています。


   ところでウイルスも発がんの一つの原因です。エプスタイン・バール(EB)ウイルスは、B 細胞の悪性腫瘍であるバーキットリンパ腫やホジキンリンパ腫の原因となり、また鼻咽頭がんを誘発すると考えられています。EBウイルスは、B 細胞に感染するヘルペスウイルスであり、大多数の健常成人のB 細胞に潜伏感染しています。EB ウイルスの他細胞への感染機構は未だ十分に解明されていませんが、EB ウイルス感染B 細胞と上皮細胞の直接的な接触が感染に重要な役割を担うと考えられています。胃がんにおいては、約10%の症例においてがん細胞特異的にEB ウイルスが感染していることが知られています。


   単純に考えても、発がんにつながる細菌(ピロリ菌)とウイルス(EBウイルス)が一緒になると発がん頻度は高くなると想像できますが、ピロリ菌とEBウイルスの共感染が胃がんの発症に及ぼす役割はこれまで全く研究されていませんでした。最近東京大学大学院と千葉大学大学院の研究者達が、胃がん発症におけるピロリ菌とEBウイルスの連携を解明しました。この成果は、発がん細菌と発がんウイルスが連携してヒトのがん発症を促す仕組みを世界で初めて明らかにした先駆的な研究といえます。


   ピロリ菌は胃の細胞表面に付着した後、菌が保有するミクロの注射針を用いてピロリ菌タンパク質CagA を細胞内に直接注入します。CagAタンパク質は胃上皮細胞に侵入後、リン酸化という修飾を受けることで発がん活性を発揮します。研究者達は、リン酸化されたピロリ菌タンパク質CagAのリン酸を外す(脱リン酸化)酵素SHP1を明らかにしました。SHP1による脱リン酸化作用の結果、CagAタンパク質の発がん活性は低下することから、SHP1は胃がんの発症を抑制する分子と考えられます。これに対し、EBウイルスが感染した胃の細胞内ではSHP1の発現が抑制され、リン酸化されたピロリ菌CagAタンパク質の発がん活性は、より増強することが明らかになりました。このような仕組みにより、胃がん発症における発がん細菌と発がんウイルスの連携が、高発がんにつながっていると思われます。


   個人の体験、感想です。これまで30年以上出血を伴う胃潰瘍をくり返し、頻繁に胃薬のお世話になっていました。数年前の胃潰瘍を機に、薬でピロリ菌の除菌をしました。それ以来、胃薬のお世話にならず、コ−ヒ−も飲めるようになり、潰瘍も発症していません。何故かお酒には弱くなりましたが・・・(by Mashi)


参考文献:Priya Saju et al., Host SHP1 phosphatase antagonizes Helicobacter pylori CagA and can be downregulated by Epstein-Barr virus. Nature Microbiology, DOI: 10.1038/nmicrobiol.2016.26.  
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