草刈りの匂いは作物の自然農薬!!

2017-5-1 7:33 管理者:  Mashi
 
   植物は様々な匂い物質を介して、お互いにコミュニケーションをとっていると考えられています。例えば、食害を受けた植物は、特別な匂いを放出しますが、その匂い物質は隣接する被害を受けていない植物に伝播され、匂い物質を受容した植物は、さまざまな防御機構を高めることが知られています。コラムでもその例をご紹介しました(ジャスミンの香り分子(ジャスモン酸メチル)は植物のSOS伝達分子(2014-9-16)、植物は香り分子でお互いにコミュニケ−ションをとる!?(2014-7-15))。しかしながらこれらの研究の多くは実験室内で行われており、野外での実証はごく少数に限られています。
 

   最近、京都大学を中心とする研究グループは、草刈りをした雑草(セイタカアワダチソウ)を、生育初期のダイズの側に置くと、ダイズの防御能力が高まり、さらに種子のイソフラボン量も増加することを明らかにしました。傷を受けた植物の匂いが、近くに生えている傷を受けていない植物の防御能力を高めるという植物間コミュニケーションが、草刈りという農作業、屋外で成立していることが初めて明らかになりました。
 

   研究グル−プは、ダイズ畑の中にセイタカアワダチソウ(雑草)を裁断しネットに入れたものを設置し、生育初期の2−3週間だけ裁断した草の匂いに触れさせました。その結果、成長期(9月)の時点で、未処理群に比べて処理群では葉の食害被害が少ないことが分かりました。また収穫時の害虫によるダイズ種子の被害も減りました。すなわち、草刈り由来の匂い物質に短期間さらされたことにより、その後のダイズの生育・繁殖が影響を受けたことになります。さらに収穫したダイズ豆中のイソフラボン類の量も増加していることが分かりました。豆中のイソフラボンの増加は、植物間コミュニケーションが、子への影響もあることを示しています。植物間コミュニケーションは、同世代個体間ばかりでなく、「世代間にも影響している」ことを世界で初めて実証したといえます。
  

   草刈りした草由来の匂い物質が、畑でこのような生態機能を有することは、単なる雑草除去と思われていた草刈りに対する認識を大きく変えるかも知れません。さらに害虫管理への応用という面でも新しいシーズになる可能性があります。現段階では、機能を示す匂い物質が何なのかは不明ですが、その解明に期待がかかります。私達が感じる爽やかな草刈りの匂いは、作物の自然農薬なのかもしれません。(by Mashi)


参考文献:Kaori Shiojiri et al., Weeding volatiles reduce leaf and seed damage to field-grown soybeans and increase seed isoflavones. Scientific Reports(2017), 7: 41508.
コラム )
アオムシの食害を受けたMashi農園のキャベツ
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