神経ストレスは胃がんを本当に進行させている!!

2017-4-25 7:57 管理者:  Mashi
 
   神経ストレスは、様々な疾病の原因や悪化に関与していると考えられています。しかしながら神経ストレスが、胃がんの進展とどのような関連があるのかよく分かっていませんでした。最近、東京大学と米国コロンビア大学の研究者達は、胃がんの進展と神経ストレスの密接な関連とそのメカニズムを明らかにしました。
   
   進行胃がんは、抗がん剤や放射線の治療が効かないことも多く、5 年生存率は20%に満たないのが現状です。同じ消化管がんである大腸がんに対しては、多くの新しい薬剤が開発され、効果を発揮しているのと対照的に、胃がんにはこうした薬剤の奏功率はそれほど高くはありません。胃がんに薬が効きにくいのは、腫瘍微小環境と呼ばれる胃がん細胞のまわりに存在するがん細胞以外の細胞が、がん細胞の増殖や生存を助けているのが一因と考えられています。
 
   研究者達は、以前より胃がんを発症するマウスに対して、迷走神経の外科的切除や、神経伝達物質阻害剤であるボツリヌス毒素の局所注射をすることで、発がんが著明に抑制されることなど、腫瘍内に存在する神経細胞に着目して研究を重ねてきました。そしてがんの中の神経細胞の量が徐々に増えていくことに着目した研究グループは、増加したアセチルコリンががん細胞に働きかけて、神経を成長させる物質を放出させるのではないかと考えました。   

   実際、胃がん細胞では神経成長因子(NGF)というホルモンが、アセチルコリン刺激によって高発現することが分かりました。すなわちアセチルコリンと神経成長因子(NGF)を介した神経とがんの相互作用が存在し、がんの増殖を加速させていたのです。実験的に神経成長因子(NGF)を胃内に過剰発現するマウスを新たに作り出すと、このマウスの胃内には異常な神経が発育し、結果として自然に胃がんが生じることが分かりました。このようにアセチルコリンを介した神経ストレスが、胃がんの発生に直接関与することが明らかとなりました。

   研究者達は、胃がんが進行する過程で、がん細胞が神経成長因子(NGF)と呼ばれるホルモンを産生し、これに反応した神経細胞ががん組織に集まり、そこからの強いストレス刺激を受けることで、胃がんの成長が加速していくことを世界で初めて明らかにしたのです。さらにこの神経成長因子(NGF)を抑える薬や、神経ストレスを放出する細胞を除去することで、胃がんの進行を抑えることもできました。
  
  従来から使われているがん細胞の増殖を直接抑える抗がん剤に加えて、神経細胞との相互作用を抑える薬剤を使うことで、胃がんに対する効果をより高め、治療に応用できると考えられます。実際、抗NGF 抗体やNGF 受容体阻害剤はすでに他疾患に対する臨床試験で使用され、最終段階の第3 相試験まで進んでいることから、これらの薬剤を従来の抗がん剤と組み合わせる、胃がんへの治療効果の臨床試験が期待されます。長寿者がよく言うように、やはりなるべくストレスのかからない生活は大切なようです。(by Mashi)

参考文献:Yoku Hayakawa et al., Nerve growth factor promotes gastric tumorigenesis through aberrantcholinergic signaling. Cancer Cell ,12, Volume 31, p21–34, (2017)
コラム )
神経ストレスががんの成長を促進する模式図
神経ストレスががんの成長を促進する模式図