魚を見ずして魚名を当てるワザ:海水のDNAから泳ぐ魚が分かる!

2017-4-20 7:51 管理者:  Mashi
 
   小学生の頃は、日曜日になると多摩川に釣りによく行っていた。魚は釣るだけではなく見るのも好きだった。場所は街の魚屋さん。当時水族館は縁遠かったが、昔の魚屋さんは身近で無料。魚屋さんの包丁さばきを見るのも好きで、1時間も2時間も飽きずに魚屋さんにいた。変な小学生だったかもしれない。後年、海洋生物も一つの研究材料にした原体験だったのだろうか。
 
   さて、ある場所にどんな魚が生息しているか調べるのは結構大変です。捕獲したり、潜水をして魚種を確認したりするのは、多くの人手と専門知識が必要であり、時間と労力が大変かかります。この問題を解決する方法はないのでしょうか?実はわずか1日の調査で、しかも魚を見ずに魚種を割り出す方法が最近注目されています。
 
   神戸大学や京都大学など5施設からなる研究グループは、海水中に含まれる排泄物などのDNAから、周辺に生息する魚種を明らかにする新技術を使うことで、目視観察よりも効率の良い魚類生物相調査が可能なことを明らかにしました。これは「環境DNA多種同時検出法(メタバーコーディング)」と呼ばれる方法で、この新しい調査法は、魚が放出して海水中に存在するDNA(環境DNA)を回収・分析し、放出源となった魚種を特定するというものです。
 
   海中には魚の死骸、皮膚、排泄物などに由来するDNAが存在しています。この海水中にただようDNAを、フィルターで濾過して抽出し、バーコーディング方式で検出します。その結果、多様な魚類のデータが一気に得られます。海水を採水するだけで短期間に多地点の魚類相を明らかにでき、外来種の侵入や分布拡大の調査、アクセスが難しい深海や危険な汚染水域、生物採集の禁止区域での調査など様々な活用が期待されています。
 
   研究者達は、京都府北部の舞鶴湾において、環境DNAメタバーコーディングを利用することで、現地調査をたった1日で行い、この方法によりその海水試料から128種もの魚類のDNAを検出することができました。この128種には2002年から14年間、計140回の潜水目視調査で観察された魚種の6割以上が含まれているそうです。ある年だけ偶然舞鶴湾へ回遊してきた魚種を除くと、なんと8割近くを1日の調査で確認できたことになるそうです。さらに、目視では見つかっていなかった魚種を新たに確認することもできたそうです。
 
   魚屋さんで魚をながめていた頃から早半世紀以上の時が経ちました。海に潜らなくても、魚を見なくても、生息痕跡(DNA)から魚種が簡単に分かるすごい時代になったものです。このDNAによる魚の迅速、簡便な検出法は、個体数の少ない魚の検出が難しかったり(これは目視でも難しいが)、また目視のように個体数を推測する事ができないなど弱点はありますが、今後海の生物資源の管理や環境の保全など、応用範囲は数多くあると思われます。(by Mashi)


参考文献:Satoshi Yamamoto et al., Environmental DNA metabarcoding reveals local fish communities in a species-rich coastal sea. Scientific Reports, 7:40368.(2017)
コラム )
葉山御用邸前の夕暮れ(photoed by Mashi)
葉山御用邸前の夕暮れ(photoed by Mashi)