動脈硬化の予防・改善も腸内フロ−ラから!?

2017-3-28 8:08 管理者:  Mashi
 
   現在、動脈硬化の危険因子として、高血圧、高脂血症、糖尿病、肥満、喫煙などが考えられています。これらに加えて最近では、腸内細菌の関与、重要性が指摘されるようになりました。実際腸内フロ−ラは、体内における一つの巨大な臓器として機能し、影響しうること、また最近のメタボロミクス(コラム2017-3-11)の進歩により、様々な疾病により変動、改善がなされることも分かってきました。
 
   動脈硬化は腸管免疫とも関係しており、腸管に免疫寛容を誘導すると、動脈硬化が予防できることも示されています。以前のコラム(2016-9-25)でも、腸内細菌のクロストリジウムが短鎖脂肪酸(酪酸)を作り、その酪酸が制御性T細胞を誘導することを述べました。実はこの腸管発祥の制御性T細胞が、免疫制御、炎症制御に関与し、全身性の動脈硬化も抑制できることが報告されています。
 
   では何故動脈硬化と腸内フロ−ラが関係するのでしょうか。最近の研究では、腸内細菌の代謝物により動脈硬化が悪化することが知られています。肉、卵、チ−ズなどの食品に含まれているリン脂質(ホスファチジ−ルコリン)のコリンが腸内細菌によりトリメチルアミンに代謝されます。この代謝物は、肝臓でトリメチルアミン-N-オキシドに変換され、この代謝物が動脈硬化の悪化に関与することが、様々な手法で証明されています。トリメチルアミン-N-オキシドは、血小板の凝集能の亢進、マクロファ−ジの泡沫化の促進、コレステロ−ル逆転送系の抑制などを示し、心血管イベントに深く関わっています。
 
   動脈硬化症の疾病である冠動脈疾患では、腸内フロ−ラの変化が見られています。健常人では、バクテロイデス属優位のエンテロタイプIとプレボテラ属が優位のタイプIIで腸内フロ−ラの90%以上を占めますが、冠動脈疾患患者では70%以下しかありません。反対に、ルミノコッカス属が優位のエンテロタイプIIIは、冠動脈疾患患者では30%以上なのに健常人では10%以下です。脳梗塞・頸動脈狭窄の患者でも、エンテロタイプIII優位のひとは頸動脈硬化が進んでいるそうです。
 
   ヒトの腸内細菌は、ファ−ミキュ−テス門などのグラム陽性菌とバクテロイデス門のグラム陰性菌に大別できます。冠動脈患者では、グラム陽性菌のラクトバシラス属の顕著な増加やビフィズス属の増加などが見られます。一方グラム陰性菌のバクテロイデス属やプレボテラ属では、顕著な減少が見られます(図参照)。肥満者でもバクテロイデスが減少していることも知られており、何らかの関連があるかも知れません。
 
   腸内フロ−ラの変化と動脈硬化疾患の関係は、原因なのか結果なのか現段階ではよく分かりません。しかし将来的には、動脈硬化を予防する腸内フロ−ラの設計図、そしてその設計図を完成させる方法なども明らかになると期待しています。例えば最近では、腸内フロ−ラの改善を目指し、偽膜性腸炎の治療に健常人からの糞便移植による治療なども行われるようになってきました。(by Mashi)


参考文献:山下智也、平田健一;腸管免疫、腸内細菌と冠動脈硬化、医学のあゆみ、259, 597-603  (2016)
コラム )
冠動脈疾患患者における腸内フロ−ラの変化
冠動脈疾患患者における腸内フロ−ラの変化