失った歯の数と動脈硬化には強い関連がある:口腔環境は全身に影響する

2017-3-5 8:36 管理者:  Mashi
 
   成人の口の中には約300種類もの微生物(細菌や真菌)が生息していて、歯垢や舌苔1mg中には約1億個の微生物がいると言われています。これらの微生物は、口腔内の清掃を怠ると爆発的に増殖し、さまざまな全身性の疾患を引き起こすことが近年明らかになってきました。帝京大学医真菌研究センタ−では、抗菌アロマを使用した口腔衛生の改善を提唱し、実際抗菌アロマキャンデイ−や口腔内崩壊錠(OD錠)の開発もしています。
 
   最近では、口腔内の細菌などが血管を通して、各臓器に侵入、増殖し、さまざまな病気の原因になっていることがわかってきました。例えば、動脈硬化、心筋梗塞、脳卒中、糖尿病、誤嚥性肺炎等も口腔内の細菌と大きく関係しています。口の中の清潔を保たなければ、全身的な健康を脅かすことになりかねません。たとえば、歯周病にかかっている人は、そうでない人に比べ1.5〜2.8倍も循環器病を発症しやすいという報告や、アテローム性動脈硬化が起きている部分から歯周病菌が検出されたという結果も多数報告されています。

   このように歯周病をはじめとした口の中のケア不良、炎症状態が、動脈硬化と関係していることが報告され、口腔衛生の改善が動脈硬化のリスクを下げる方法の一つとなる可能性があります。しかし、本当に関連しているかどうか、また日本人の場合はどうかなど、まだ明らかにされていない点が少なからずあります。

   そこで京都大学の研究グループは、残存している歯の数と動脈硬化の状態を調べる疫学調査を行いました。口腔ケアの指標として、歯周病などで失った歯の数を用いたのです。動脈硬化の評価は、心臓足首血管指数(CAVI:心臓(Cardio)から足首(Ankle)までの動脈(Vascular)の硬さを反映する指標(Index))で行いました。動脈硬化が進展するほどCAVIは高い価となります。この研究は、京都大学と滋賀県長浜市の共同事業であり、長浜市民1万人を対象とした大規模な疫学調査(コホ−ト研究)です。京都大学の口腔外科の歯科医師が詳細な口腔検診を行いましたが、このような大規模研究で口の中を詳細に検診した調査はほとんどありません。

   調査の結果、失った歯の数と動脈硬化度に有意な関連があることが分かりました。また、女性に比べると男性でその傾向が強いことも明らかになりました。歯周病など口の中の病気は、予防効果が非常に高いことで知られており、口腔ケアをきちんと行うことで、失う歯の数を減らすことができると考えられます。口の中の病気の予防や治療は、口の中の状態を改善させるだけでなく、動脈硬化症をはじめとする全身性疾病の予防・改善によい影響がある可能性が考えられます。

   では一体何故口腔環境が全身に影響を及ぼすのでしょうか。口腔に感染症(虫歯や歯周病を含む)や外傷が起きると、炎症が起き全身を回る炎症性サイトカインが産生されます。その結果、血管内皮が傷害されたり血小板凝集が促進されたりして動脈硬化が全身で進展し、心筋梗塞や脳卒中が引き起こされる原因になります。口腔感染源の微生物や菌の毒素が直接血管に入ることも知られています。
 
   歯を失う二大原因は虫歯と歯周病であり、若い人は虫歯で、40代中頃より歯周病で歯を失う人の割合が増えます。歯周病をはじめとして口腔の病気は、口の中だけの病気とあなどらず、常に口腔ケアに気をつけることが、生活習慣病や循環器病の予防にもつながることを再認識したほうが良さそうです。(by Mashi)


参考文献:Asai K., et al., Tooth loss and Atherosclerosis: The Nagahama Study.  Journal of Dental Research, 94(3), pp. 52S-58S (2016),  doi.org/10.1177/0022034514559127
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口腔ケアは全身の病気の予防
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