テルペン香る植物の園

2017-1-27 9:49 管理者:  Mashi
 
  アロマはテルペン類の泉、宝庫です。本コラムでも「バラの香りとリナロ−ル三兄弟」(2014-7-23)、「シトロネラ−ルを認識する肝臓の嗅覚受容体」(2015-2-25)、サンタロ−ルの「白檀(ビャクダン)の新しいかおり分子をめぐって」(2014-3-18)、メント−ルを扱った記事(2014-4-1&2014-4-14)やシトラスの記事(2014-12-29)などを扱ってきました。そもそもテルペンの語源はテレビン油ですが、精油の中から大量に見つかった炭素数10個の化合物に与えられた名称です。テルペノイドとは、炭化水素鎖にアルデヒド基(テルペンアルデヒド)やアルコ−ル基(テルペンアルコ−ル)などの官能基がついたものを総称しています。
 
  テルペンは、植物のグルコ−ス代謝に関与する解糖系やクエン酸回路(TCA回路)で重要な鍵分子となっているアセチルCoA(メバロン酸経路)やピルビン酸(非メバロン酸経路)から作られます。テルペンは、炭素5個のイソプレン骨格が基本ユニットであり、イソプレン単位の数に応じて、それぞれモノテルペン (炭素10個)、セスキテルペン (炭素15個)、ジテルペン(炭素20個)と呼称されています。テルペン類は、様々なテルペン合成酵素により生合成され、環状構造をとることもありますが、生合成が進むと炭素原子が取り除かれることもあるため、炭素数が5の倍数にならないものもあります。
 
  モノテルペン(炭素10個)類の多くは、植物の精油成分として存在し、医薬品、香粧品、フレ−バ−として利用されているものもあります。代表的なモノテルペンには、ミルセン(月桂樹、フェンネル)、オシメン(ラベンダ−)、テルピネン(ティ−ツリ−)などがあります。モノテルペンアルコールには、リナロール(バラ、ラベンダー、ロ−ズウッド、イランイラン)、シトロネロール(バラ、ゼラニウム)、さらにコリアンダー、パルマローザ、バラにはゲラニオールやネロールも知られています。モノテルペンアルデヒドには、シトラ−ル(メリッサ、レモングラス)、シトロネラ−ル(ユ−カリ・シトリオドラ、レモングラス)などがあります。
 
  モノテルペンが環状構造になった単環性モノテルペン類には、リモネン(柑橘類)、フェランドラ−ル(セリ科)、シメン(クミン、タイム)、メント−ル(ペパ−ミント)、チモ−ル(タイム)などがよく知られています。より複雑になった二環式モノテルペン類としては、カラン(クロコショウ)、ピネン(ロ−ズマリ−、ジュパニ−、ヒノキ)、カンファ−(クスノキ)などがあります。
 
  セスキテルペン(炭素15個)類には、ファルネソ−ル(バラ)、ネロリド−ル(ネロリ)、ベチベロ−ル(ベチバ−)などの代表的な香気物質があります。セスキテルペンのように炭素鎖が長くなり二重結合の数も多くなると、環化の可能性も高くなります。たとえば、ジンジャ−のジンギベレン、サンダルウッドのサンタロ−ル、クロ−ブやブラックペッパ−に含まれるカリオフィリンなどがあります。
 
  なんだかテルペンの教科書のような退屈な記述になってしまいましたが、このように多くの植物が多種類のテルペン類を作り出し、私達の生活を豊かにしてくれています。このコラムでは、テルペン類のほんの一部しか紹介できませんが、アロマの中心的な香気成分であるテルペン類を再認識したいものですね。

  最後に余談ですが、様々なテルペン類を漂わせるバラの花について。著名なバラ園は全国にたくさんありますが、私は古い洋館の庭に楚々として咲くバラの花が好きです。東京都北区の旧古河庭園とか鎌倉市の鎌倉文学館とか。(by Mashi)
コラム )
バラの香漂う鎌倉文学館 (photoed by Mashi)
バラの香漂う鎌倉文学館 (photoed by Mashi)