予防接種は免疫応答が強まる午前中が良い!?

2016-12-2 8:30 管理者:  Mashi
 
   私達の循環器、呼吸器、消化器など様々な臓器は、交感神経や副交感神経などの自律神経により調節されています。交感神経は、身体活動が高まる昼間に上昇し、活動性が低くなる夜間に低下するという日内変動があります。一方、免疫応答の場であるリンパ器官にも神経細胞が分布し、免疫細胞にも神経伝達物質に対する受容体が存在しますが、神経系と免疫系の関係は十分には解明されていません。
 
   最近、大阪大学免疫学フロンティア研究センターの研究グル−プが、交感神経による免疫応答の日内変動を発見しました。交感神経の活動によりリンパ球上に発現しているβ2アドレナリン受容体が刺激されることで、リンパ球のリンパ節からの脱出が抑制されリンパ節にとどまるため、免疫応答が増強することが分かりました。交感神経の活動性には日内変動があり、交感神経がリンパ球の体内動態を制御することで、 免疫応答の日内変動を生み出すことが明らかになりました。
 
   研究者達は、マウスを用いて実験を行いましたが、マウスはヒトの生活とは昼夜逆転しており、夜が活動期であり、交感神経の働きも高まっています。マウスの免疫細胞と交感神経の日内変動を分析したところ、マウスのリンパ節内の免疫細胞の量は、交感神経の働きが高まる午前1時頃が最も多く、交感神経の働きが鈍る午後1時の約2倍ありました。さらに、午前1時と午後1時にマウスにワクチンを接種して血液中に作られる抗体の量を調べてみると、5週間後には交感神経の活動が活発化する夜に接種したマウスの方が抗体量は4倍に増えていました。
 
   免疫をつかさどるT細胞などのリンパ球は、リンパ節から放出されて血流に乗って全身を巡っていますが、その量は1日のうちで変動し、交感神経が制御役になっています。すねわち、リンパ節に分布する交感神経からノルアドレナリンが分泌されると、リンパ球に発現するβ2アドレナリン受容体が刺激される結果、リンパ球はリンパ節にとどまるようになります。接種されたワクチン(不活化された病原体)は、リンパ節に運ばれ、病原体を攻撃する抗体が作られるので、リンパ球が多い方が免疫反応は進み、抗体も作られやすいことになります。
 
   このように、交感神経が活性化している時間帯のワクチン接種が、より高い効果をもたらすことが判明しました。ヒトの交感神経の活動性がピークを迎えるのは午前中であるため、「午前中のうちにワクチン接種を受ければ予防効果が高まる可能性がある」と、研究者達は述べています。またこの研究結果は、「同じワクチンを接種しても効果に個人差がある」という現象の解釈にもつながる可能性があります。
 
   生物の行動から考えると、身体活動の高い時間帯は、病原体と遭遇する確率も高いと思われます。このようなときに、交感神経が高まり、免疫応答が強くなっているというのは、生物の感染防御という観点から理にかなっています。このような神経系と免疫系の日内変動、相互作用の仕組みは、生存、進化にきっと有利に働いたと思われます。(by Mashi)


参考文献:Kazuhiro Suzuki et al., Adrenergic control of the adaptive immune response by diurnal lymphocyte recirculation through lymph nodes. The Journal of Experimental Medicine (2016), DOI: 10.1084/jem.20160723
コラム )
予防接種は免疫応答が強まる午前中が良い
予防接種は免疫応答が強まる午前中が良い