米国疾病センタ−(CDC)が警告を発した真菌は、帝京大学医真菌研究センタ−で発見されたもの!

2016-11-8 21:10 管理者:  Mashi
 
   つい先週(2016年11月4日)、米国疾病センタ−(CDC)は、ある真菌に対して大きな脅威があると警告を出しました。その真菌は、Candida auris(カンジダ オ−リス:オ−リスは耳の意)といい、実は2009年に帝京大学医真菌研究センタ−で発見、報告された新しい真菌です。都内の病院に入院していた患者の外耳道の分泌液から世界で初めて分離されました。その後、海外でもコロンビア、インド、イギリスをはじめ10カ国以上で報告されるようになりました。

   CDCの週間疾病率死亡率報告では、2013年から2016年までにカンジダ オ−リスでカンジダ症を発症した7人について報告され、さらに6人いて現在解析中とのことです。CDCの発表した7名の患者背景ですが、白血病、脳腫瘍、重篤な肺炎、骨髄移植など重病であり、また中心静脈カテ−テル、導尿カテ−テルを実施しており、抗真菌剤も投与されていました。患者は、特定の地域からではなく全米から見つかっており、カンジダ オ−リスは、5名が血液から検出され、尿と耳から検出されたのが各一名です。3名は存命中ですが、4名は既に亡くなっています。CDCでは、この真菌が世界的な脅威になりつつあると警鐘を鳴らしています。

   この真菌カンジダ オ−リスが注目される理由の一つは、多剤耐性を獲得していることが多いからです。実際、CDCの報告患者でも、7人中5名が抗真菌剤フルコナゾール耐性、さらにアムホテリシンB耐性やエキノキャンデイン耐性でした。また既に保存されている菌株コレクションの薬剤耐性をCDCが調べたところ、ほとんど全ての菌株はフルコナゾールに高度耐性で、1/3がアムホテリシンB耐性、そしていくつかはエキノキャンディン系に耐性でした。抗真菌薬の主要な3系統、アゾール系、エキノキャンディン系そしてポリエン系の全てに耐性を示したものも数株あり、治療の選択が非常に限られる可能性があります。

   カンジダ オ−リスが注目されるもう一つの理由は、菌の鑑別・同定が難しく、他のカンジダだと誤認されることが多いからです。CDCの報告患者でも、7人中5名が当初 Candida haemulonii と誤認されていたそうです。これらの二つの理由が、カンジダ オ−リスを十分警戒する理由だとCDCは警告を発しています。

   カンジダ オ−リス感染の危険因子は、手術、糖尿病、広域スペクトラムの抗菌剤、抗真菌剤の使用、各種カテ−テルの使用などであり、乳幼児や年配者をはじめ全世代のヒトに見つかっており、注意が必要だとCDCは警告しています。カンジダ オ−リスは、血流感染、創傷感染や耳の感染症を引き起こすことが分かっていますが、医療関連感染が多く、特に数週間以上の長期入院と関連があると言われています。手術、点滴、カテーテルなどから侵入し、免疫力が弱った時に全身に周り、重篤な症状を引き起こすものと考えられていますので、十分な免疫力がある健康な人が感染を恐れる必要は余りありません。

   通常カンジダ症の原因菌としては、カンジダ アルビカンス(Candida albicans) が圧倒的に多く、約半数を占めます。図に示しましたが、カンジダ オ−リス(Candida auris) は、出現頻度ランクでは最低の 0.01%以下ですが、これは2012年当時の状況であり、誤認される確率も高いとすると、出現頻度は現在および今後はもっと高いと予想されます。

   帝京大学医真菌研究センタ−で発見された新しい真菌が世界的に注目されるのは、これからの真菌治療に一石を投じたうれしい出来事です。(by Mashi)


参考文献:Snigdha Vallabhaneni, et al., Investigation of the First Seven Reported Cases of Candida auris, a Globally Emerging Invasive, Multidrug-Resistant Fungus — United States, May 2013–August 2016,  CDC Early Release / November 4, 2016 / 65
コラム )
カンジダ症原因菌の出現頻度
カンジダ症原因菌の出現頻度