食中毒をしないジャガイモを作る

2016-11-1 7:26 管理者:  Mashi
 
   ジャガイモによる食中毒は、中毒情報センターによると毎年50件前後あり、学校などで自分たちが育てたジャガイモを食べて中毒を起こすことが少なくありません。食中毒の原因物質は、ソラニンやチャコニンなどの「ステロイドグリコアルカロイド」であり、芽や緑色した皮の部分に多く、熱に安定な物質です。ジャガイモは根が肥大したのではなく、茎(塊茎)ですから日光に当たると葉緑素が作られ緑色を呈してきます(図参照)。ジャガイモの芽に毒があるのはよく知られていますが、光が当たり緑色をした部分も危険だという認識は低いようです。
 
   ソラニンにはコリンエステラ−ゼ阻害作用があり、食中毒症状としては、吐き気、嘔吐、腹痛、下痢等の症状があり、一般的に軽症のことが多いのですが、まれに呼吸困難、腎不全、循環障害などの重い症状となる場合もあります。最近、理化学研究所、大阪大学大学院、神戸大学大学院の共同研究グループは、ジャガイモに含まれ食中毒を引き起こすソラニンなどの「ステロイドグリコアルカロイド」の生合成に関わる遺伝子を同定し、これらの遺伝子発現を抑制すると、ソラニンやチャコニンが作られなくなるとともに、ジャガイモの萌芽も制御できることを見つけました。
 
   共同研究グループは、「ステロイドグリコアルカロイド」が多く蓄積される芽などで、強く発現している遺伝子を解析したところ、シトクロムP450酸化酵素のファミリーをコードする遺伝子PGA1とPGA2を発見しました。コレステロールから「ステロイドグリコアルカロイド」への生合成過程では、数カ所で水酸化(-OHの付加反応)を受けると想定されていましたが、実際PGA1やPGA2は、コレステロールなどを水酸化する酵素を作ることが明らかになりました(図参照)。

   次に、標的遺伝子配列の一部に相当する二本鎖RNAによって、標的遺伝子の発現を抑制するRNA干渉法により、PGA1とPGA2の遺伝子発現をそれぞれ抑制した遺伝子組換え体を作りました。収穫したジャガイモの「ステロイドグリコアルカロイド」含量を調べたところ、低濃度であり、さらに光を照射しても「ステロイドグリコアルカロイド」の含量は増加しないことが分かりました。

   このようにしてPGA1とPGA2の遺伝子発現を抑制しても、ジャガイモの収量には差がみられなかったそうです。さらに、収穫したジャガイモは、何も処理をしない限り、暗所で4℃あるいは20℃で保存しても萌芽しないことが分かりました。今後、PGA1やPGA2遺伝子を標的としたゲノム編集などにより、中毒を起こすソラニンなどの「ステロイドグリコアルカロイド」の含量を低く抑え、かつ萌芽を制御できるジャガイモが可能になると期待されます。(by Mashi)


参考文献:Naoyuki Umemoto et al., Two Cytochrome P450 Monooxygenases Catalyze Early Hydroxylation Steps in the Potato Steroid Glycoalkaloid Biosynthetic Pathway. Plant Physiology (2016),  doi: 10.1104/pp.16.00137
コラム )
ソラニンの生合成過程模式図と緑化したジャガイモ(photoed by Mashi)
ソラニンの生合成過程模式図と緑化したジャガイモ(photoed by Mashi)