腸内細菌→短鎖脂肪酸→G蛋白共役型受容体→抗肥満 !!

2016-9-19 7:34 管理者:  Mashi
 
   腸内細菌叢(フロ−ラ)と肥満との関わりについては、肥満マウスと正常マウスの腸内細菌フロ−ラの組成に違いがみられ、さらに肥満マウスの腸内細菌を正常マウスに移植すると体脂肪量が増えたという報告があります。ヒトでも、肥満者と正常体重者との間で腸内細菌フロ−ラの構成比に違いがあることも知られています。御存じの方もいると思いますが、2013年に「Sience」誌に興味深い結果が報告されました。2匹の無菌状態で育てたマウスに、一方には肥満の人の腸内細菌を、もう一方には痩せた人の腸内細菌を移植し、同じエサと運動量の環境下で育てたところ、痩せた人の腸内細菌を移植したマウスでは脂肪量の変化が見られなかったのに対し、肥満者の腸内細菌を移植したマウスでは、脂肪が増え太ってしまったのです。
 
   近年のダイエット法の一つに、「ココナッツオイルなどに含まれる中鎖脂肪酸は分解されやすいので体に脂肪がつきにくい」というのがあります。実は短鎖脂肪酸も長鎖脂肪酸に対して分子の鎖が小さく、また消化経路が異なるため、中鎖脂肪酸同様分解されやすい脂肪酸です。今回は、短鎖脂肪酸に選択的に結合し、抗肥満につながる生理活性を示す受容体のご紹介です。なお、脂肪が分解してできる脂肪酸は、炭素の数により、短鎖脂肪酸(炭素数が7以下)、中鎖脂肪酸(炭素数が8~10程度)、長鎖脂肪酸(炭素数が12以上)に分類されたりしますが、化学上の厳密な定義はありません。

   腸内細菌の主な代謝産物は、食物繊維などを分解してできる酢酸(炭素数2)、酪酸(炭素数4)、プロピオン酸(炭素数3)などの短鎖脂肪酸です。これら短鎖脂肪酸は、遊離脂肪酸を受け取る細胞膜上にある7回膜貫通型受容体であるG蛋白共役型受容体(嗅覚受容体もこの仲間です)のGPR41とGPR43に結合します。GPR41受容体は主にプロピオン酸と酪酸によって、GPR43受容体は主に酢酸とプロピオン酸によって活性化され、それは循環血液中の短鎖脂肪酸濃度でも十分に起きることが知られています。
 
   さて、身体の組織でこれら受容体の遺伝子発現を解析した結果、短鎖脂肪酸受容体GPR41は、交感神経節に多く発現していることが分かりました。交感神経細胞を用いた実験やGpr41遺伝子が欠損したマウスの研究から、神経伝達物質であるノルアドレナリンの分泌量の制御や、体温や酸素消費量を指標とした体全体のエネルギー消費量の制御が明らかにされました。すなわちGPR41受容体は、短鎖脂肪酸を介して交感神経系のコントロールにより、エネルギーバランスを一定に保つセンサーとしての役割を果たしていることが分かったのです(図参照)。
 
   一方、短鎖脂肪酸受容体GPR43は、白色脂肪組織に多く発現しており、Gpr43遺伝子が欠損したマウスでは、体重と脂肪重量が増え肥満傾向を示しました。逆に、白色脂肪組織だけにGPR43受容体を過剰に発現させたGpr43トランスジェニックマウスでは、痩せる傾向が見られました。さらに詳しい分子メカニズムを調べたところ、GPR43受容体からのシグナルは、脂肪細胞のインスリンシグナルだけを抑えることが分かりました。つまり、食べ過ぎてブドウ糖や脂肪酸などのエネルギーが過剰にあっても、GPR43受容体が活性化されることにより、エネルギーの白色脂肪組織への取り込みを抑制し、脂肪の蓄積を抑えていると考えられます。
 
   このような短鎖脂肪酸受容体の解析は、「お酢ダイエット」「食物繊維ダイエット」などの一つの解釈になるのかも知れませんね。(by Mashi)


参考文献:木村郁夫、腸内細菌と宿主の肥満をつなぐ受容体、生命誌ジャ−ナル、86号 (2015)
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短鎖脂肪酸受容体と抗肥満作用
短鎖脂肪酸受容体と抗肥満作用