金属の匂いの正体は?;金属臭は、実は体から!

2015-5-4 9:38 管理者:  Mashi
 
   鍵や硬貨を触ったり、スプ−ンやホ−クを使ったり、小さい頃の鉄棒遊びなど、金属の匂いを感じたことは少なくないと思います。でもこれは本当に金属の匂いなのでしょうか?通常匂い物質は、水に溶ける比較的低分子の揮発性有機化合物です。固体で沸点の高い金属類が、揮発して嗅上皮へ届いているとは考えにくいです。では金属臭とは一体何なのでしょうか?実は近年その答えが分かりました。
 
   雑誌Natureのニュースでも紹介されたのですが、ドイツライプチヒ大学の研究チームがこの謎の解明に挑みました。彼らは鉄イオン(Fe2+)と人工の汗とをヒトの皮膚に作用させ、発生する化合物をガスクロマトグラフィーで分析しました。その結果、鉄イオンに触れた皮膚からは、匂い物質として炭素数7〜10の直鎖アルデヒド類や1-オクテン-3-オンが検出されました(図参照)。金属には、合金の成分としてリンを含んでいるものもあり、その場合にはリン化合物のメチルホスフィン、ジメチルホスフィン(図参照)といった匂い成分ができていることも分かりました。結局「金属臭」と思われていたものは、金属そのものではなく、金属イオンによって皮脂が分解されてできた物質の混合した匂いだったのです。

   1-オクテン-3-オンは、化学式CH2=CHCO(CH2)4CH3で表される不飽和ケトンの一種で、
金属臭、マッシュルーム臭、血液臭とも称される匂いを持ち、ごく低濃度でも感じ取れる匂い物質です。大きな虫眼鏡で見ると分かりますが、指先では汗がガラス玉のようにキラキラ見えます。刑事が調べる指紋の成分は、実は脂質やタンパク質等です。指はミクロで見ると、汗や脂質などの有機物でドロドロなのです! 
   金属イオンは、実は強力な酸化剤でその酸化力は、銀イオン>銅イオン>鉄イオン>亜鉛イオン>アルミニウムイオンの順番です。金属臭が発生するメカニズムは、まず金属と汗が反応して金属イオンを生成させ、この 産生した陽イオンが皮脂の酸化、分解などを行い1-オクテン-3-オンなどの揮発性物が発生することなのです。この化学反応は極めて短時間で起きます。つまり「金属臭」は金属の匂いではなく、「体から出た物質が原因の匂い」だったのです。
 
   ものを食べたときの金属臭に関する研究もあります。ヒトが金属イオン(Fe2+)の水溶液を口に含んだ時に感じる金属臭が、どこで生成しているのか調べたところ、頬の内側で強い鉄臭が感じられ、1−オクテン−3−オンが検出されました。1−オクテン−3−オンは、鉄二価イオンと脂質が反応して生成するわけですが、実際頬内側粘膜から脂質が検出されました。さらに口の中の鉄臭は、唇の内側や咽頭部など表面が粘膜で覆われた組織で生成していることも分かりました。
 
   身近な金属臭が、実は自分の体の汗(体液)と脂質に原因があったとは驚きですが、最近まで世界中が、金属臭は金属の匂いだと思っていた常識は一体何だったのでしょう!(by Mashi)


参考文献:1) Dietmar Glindemann et al., The Two Odors of Iron when Touched or Pickled: (Skin) Carbonyl Compounds and Organophosphines. Angew. Chem. Int. Ed., (2006) 45, 7006-7009. 2)加藤寛之ら:口腔内で感じる鉄臭の生成場所 缶詰時報 Vol.90, No.3, 41-50(2011)
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金属臭は体の成分由来
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