解明が進む植物精油の抗ウイルス作用

2014-6-17 15:46 管理者:  monjyu
 私たちが暮らす生活環境の中には多種類のウイルスが存在し、しばしば感染症を引き起こします。中でも、インフルエンザウイルス、ノロウイルス、アデノウイルス、ヘルペスウイルスなどは、毎年集団感染を引き起こし、学級閉鎖などの社会問題となっています。  
 インフルエンザの治療薬としては、「タミフル」や「リレンザ」などが有名ですが、植物精油も古くからウイルス感染症の治療に利用されています。近年、科学的な手法により、抗ウイルス作用のある精油や有効成分、作用メカニズムの研究が進んできています。  
 イヌやサルの腎臓細胞から確立された各株細胞による in vitro試験によって、アップルミント(Mentha suaveolens)、ティーツリー(Melaleuca alternifolia)由来の各精油、および市販ブレンド精油であるOlbas、On GuardTMに抗ウイルス作用が確認されています。Olbasは、ペパーミント、カユプテ、ユーカリ、クローブ、ジュニパー由来の各精油に、シラタマノキ果実由来の冬緑油をブレンドした精油です。On GuardTMは、ワイルドオレンジ果皮油を中心に、クローブ、シナモン、ユーカリ、ローズマリー由来の各精油をブレンドした精油です。両製品は共に、風邪などの感染症、風邪に由来する喉の痛み、咳などの治療に使われています。  
 アップルミント精油の有効成分は主成分であるピペリテノンオキシド(モノテルペンの仲間)であり、単純ヘルペス1型ウイルス(HSV-1)の増殖サイクル後期に作用し、増殖に必須のステップである細胞内抗酸化物質グルタチオンの枯渇を抑制して、抗ウイルス作用を発揮するものと推測されています。HSV-1は、皮膚の赤みや水ぶくれを発症する口唇ヘルペスや、ヘルペス口内炎、ヘルペス髄膜炎、単純ヘルペス脳炎の原因となり、三叉神経に潜伏感染して、顔面痛を引き起す原因にもなります。  
 ティーツリー精油の有効成分は主成分のテルピネン-4-オール(モノテルペンの仲間)であり、インフルエンザA型ウイルスの表面に存在しているヘマグルチニンの膜融合サイトに結合し、ウイルスが宿主細胞内へ侵入するのを阻害して、抗ウイルス作用を発揮するものと推測されています。インフルエンザA型は、インフルエンザの中でも最も流行性の高いものです。   
 また、実際にインフルエンザA型ウイルスを感染させたマウスを用いたin vivo試験によって、荊芥(Schizonepetae herba、シソ科)、およびヒメジソ(Mosla dianthera、シソ科)由来の各精油に、抗インフルエンザ作用が確認されています。荊芥由来の精油の投与によって、感染マウス血清中の対ウイルス赤血球凝集価、およびIFN-α、IL-2といったサイトカインのレベルが低下しました。 荊芥は漢方で用いられ、発汗、解熱、鎮痛、止血、抗炎症といった作用が知られています。ヒメジソ由来の精油の投与は、感染マウス肺のウイルス数の減少、血清中のIFN-γ、IL-4といったサイトカインレベルの低下、さらに肺組織の抗酸化機能の増強をもたらし、インフルエンザの治療と肺炎の予防に有望と考えられました。  
 以上述べてきたように、最近の研究によって、植物精油の抗ウイルス作用の解明が進んでいます。現在までに得られている研究成果によっても、精油は、市販抗インフルエンザ薬「タミフル」や「リレンザ」とは異なる機作によって作用することが分かっています。今後、各精油の抗ウイルス・スペクトラム、および有効成分と作用機作に関する研究が進み、さらにヒト試験によって有効性が確認されれば、ウイルス感染症に対するアロマテラピーの利用機会がさらに増えることが期待されます。(by Takky)  

参考文献 1) Civitelli L, Panella S, Marcocci ME, De Petris A, Garzoli S, Pepi F, Vavala E, Ragno R, Nencioni L, Palamara AT, Angiolella L. : In vitro inhibition of herpes simplex virus type 1 replication by Mentha suaveolens essential oil and its main component piperitenone oxide. Phytomedicine. 2014 Mar 10.pii: S0944-7113(14)00035-X.doi: 10.1016/j.phymed.2014.01.013.
2) Li X, Duan S, Chu C, Xu J, Zeng G, Lam AK, Zhou J, Yin Y, Fang D, Reynolds MJ, Gu H, Jiang L. : Melaleuca alternifolia concentrate inhibits in vitro entry of influenza virus into host cells. Molecules. 2013 Aug 9;18(8):9550-66.doi: 10.3390/molecules 18089550.
3) Heidary Navid M, Reichling J, Schnitzler P. : Antiherpetic activity of the traditionally used complex essential oil Olbas. Pharmazie. 2013  Aug;68(8):702-5.  
4) He T, Tang Q, Zeng N, Gou L, Liu JVV, Yang J, Yu L, Wang Z, Gong XP. : Study on effect and mechanism of volatile oil of Schizonepetae herba and its essential components against influenza virus. Zhongguo Zhong Yao Za Zhi. 2013 Jun;38(11):1772-7.
5) Wu QF, Wang W, Dai XY, Wang ZY, Shen ZH, Ying HZ, Yu CH. : Chemical compositions and anti-influenza activities of essential oils from Mosla dianthera. J Ethnopharmacol. 2012 Jan 31;139(2):668-71.doi: 10.1016/j.jep.2011.11.056. Epub 2011 Dec 16.
6) Garozzo A, Timpanaro R, Stivala A, Bisignano G, Castro A. : Activity of Melaleuca alternifolia (tea tree) oil on influenza virus A/PR/8 : study on the mechanism of action. Antiviral Res. 2011 Jan;89(1):83-8. doi: 10.1016/j.antiviral.2010.11.010. Epub 2010 Nov 21.
7) Wu S, Patel KB, Booth LJ, Metcalf JP, Lin HK, Wu W. Protective essential oil attenuates influenza virus infection: an in vitro study in MDCK cells. BMC Complement Altern Med. 2010 Nov 15;10:69.doi: 10.1186/1472-6882-10-69.
8) Garozzo A, Timpanaro R, Bisignano B, Furneri PM, Bisignano G, Castro A. In vitro antiviral activity of Melaleuca alternifolia essential oil. : Lett Appl Microbial. 2009 Dec;49(6):806-8.doi: 10.1111/j.1472-765X.2009.02740.x. Epub 2009 Sep 18.
ヒメジソ(Mosla dianthera)
ヒメジソ(Mosla dianthera)
荊芥(Schizonepetae herba)
荊芥(Schizonepetae herba)